ベトナムの日系企業進出の現状
日系企業のベトナム進出は、1990年代以降に本格化しました。当初は人件費の安さを背景にした製造拠点の設置が中心でした。しかし現在は、商社、物流、建設、IT、サービスまで裾野が広がっています。進出の目的も、生産拠点から国内市場向けの事業展開へと軸足を移しつつあります。
企業側の姿勢も前向きです。JETRO「海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」によれば、ベトナムは今後の事業展開について「拡大」と答える企業の割合が、ASEAN域内で高い水準にあります。撤退や縮小が話題になる国もあるなかで、ベトナムは投資先としての評価を保っています。
人の動きも同じ方向を向いています。外務省「海外在留邦人数調査統計」(令和7年)を見ると、ベトナムは在留邦人の多いアジアの国のひとつです。企業が増えれば、そこで働く日本人の需要も生まれます。数字の詳細はe-Stat「海外在留邦人数調査統計」でも確認できます。
ここから本記事の立場を先に述べます。日本人にとって、日系企業はベトナムで現地就職する際の入口として、最も現実的な選択肢です。日本語が通じる環境が残り、選考も日本の商習慣に近い形で進みます。ベトナムで働くなら、まず日系企業の求人から見るのが近道だと考えてください。
製造業からIT・サービス業へ広がる進出分野
実際の求人を見ると、進出分野の広がりがはっきりわかります。登場する業界は、IT・WEB・ゲーム、メーカー(電気・電子、自動車・機械、その他)、商社、物流、金融、建築・不動産、コンサルティング、医療、教育、政府・公共まで及びます。ベトナムを「工場の国」とだけ捉えると、実像を取り違えます。
IT分野では、オフショア開発拠点の求人が目立ちます。日本の顧客から要件を受け取り、現地の開発チームに伝えるオフショア開発のブリッジSEは代表的な職種です。日本語での要件整理と、英語またはベトナム語でのチーム運営を橋渡しする役割になります。
商社や物流にも日本人向けのポジションがあります。日系工場に部材を納める専門商社の営業、日系顧客担当の国際物流のコーディネーターなどです。いずれも日本本社とのやり取りが業務の中心で、日本での実務経験がそのまま前提知識になります。
サービス分野の求人も実在します。日系保育園で子どもの指導にあたる職種、日系企業向けに太陽光発電ソリューションを提案する営業などです。現地に住む日本人と日系企業が増えたことで、それを支える仕事が生まれています。
つまり、進出の重心は製造業から非製造業へと移っています。ものづくりのイメージが先行しがちですが、求人の数で見れば非製造業のほうが厚いのが実態です。
求人データから見るベトナム日系企業の採用傾向
進出の広がりは、求人の構成にも表れています。ABROADERS CAREER 掲載求人データ(2026年8月時点)で見ると、ベトナムの求人のうち約39%が日系企業によるものです。4件に1件どころか、3件に1件を超える割合です。
件数でも確認しておきます。「日系企業」の条件で絞り込むと、2026年8月時点で55件が掲載されています。日本人を採用する前提で募集されている求人が、この規模で存在するということです。
まずは実際の募集要項に目を通すことをおすすめします。給与や勤務地の書き方は企業ごとに違い、条件の幅は一覧で見たほうがつかめます。ベトナムの日系企業の求人一覧を見るところから始めてください。
求人に多い職種・業界と歓迎条件
どの職種の募集が多いのかを見ていきます。以下はベトナム全体の職種分布です(ABROADERS CAREER 掲載求人データ、2026年8月時点)。
- 営業/セールスエンジニア:37.41%
- 企画/事務/マーケティング/PR:20.14%
- 建設/土木/施工管理:13.67%
- 接客/カスタマーサービス/飲食/コールセンター:8.63%
- 製造業エンジニア(その他)/人事・総務・労務・法務:各6.47%
職種を軸に候補を絞りたい場合は、ベトナム日系企業の求人55件(2026年8月時点)を職種で絞り込むと効率的です。
次に、求人票に付いている歓迎条件の傾向です。こちらも同じデータによるものです。
- 管理職・マネジメント経験歓迎:約28%
- 語学力不問:約19%
- 現地在住者歓迎:約17%
- 高給/好条件:約17%
この2つの分布から、読み取れることが2点あります。1点目は職種の偏りです。営業と企画・事務で全体の6割弱を占めています。専門的な技術職より、日本の会社で一般的な仕事のほうが募集が多いということです。
つまり日本での営業・事務経験がそのまま活きる構造になっています。ベトナム向けに新しいスキルを身につけてから応募する、という順番で考える必要はありません。管理職・マネジメント経験歓迎が約28%ある点も、日本で積んだ経験が評価される裏づけになります。
2点目は語学の要件です。語学力不問が約19%あります。日本語主体で働ける求人が一定数存在するということで、英語やベトナム語に不安がある方でも応募できる枠があります。
あわせて現地在住者歓迎が約17%ある点も押さえておきましょう。すでにベトナムに住んでいる方には有利ですが、裏を返せば残りの8割強は日本からの応募も想定した求人です。
日本での職務経験と日本語力を軸に応募できる求人が、ベトナムには一定数あります。語学力を完成させてから動くのではなく、いまの経歴で応募できる求人を先に確認してください。求人の中身を知ることが、ベトナム転職の最初の一歩になります。
ベトナムの求人のうち約39%が日系企業で、日系条件での掲載は2026年8月時点で55件です。職種は営業と企画・事務で6割弱を占め、語学力不問の求人も約19%あります。日本での職務経験を軸に応募できる求人が、想像より多く存在します。
ベトナム日系企業の給与・待遇相場(現地採用)
最初に前提を整理します。ベトナムの日系企業求人は現地採用が中心です。日本本社から派遣される駐在員とは、雇用契約も待遇の組み立て方も異なります。求人票に書かれた条件は、あくまで現地法人との直接雇用のものだと考えてください。
通貨の建て方にも幅があります。給与はUSD建てが主流ですが、VND(ベトナムドン)建てやJPY建ての求人も混在します。応募先を比較するときは、どの通貨で提示されているかを最初に確認しましょう。
そのうえで注意点があります。給与は額面ではなく、住宅・食事・一時帰国などの現物支給を含めた総額で見てください。ベトナムでは家賃や食費を会社が負担する求人が珍しくありません。額面が低く見えても、手元に残る金額では上回ることがあります。
職種・エリア別の給与レンジ
実際のレンジを職種とエリアで比べます。以下はABROADERS CAREER 掲載求人データ(2026年8月時点)によるものです。
給与レンジ比較(2026年8月時点)
| エリア | 職種 | 給与レンジ |
|---|---|---|
| ベトナム全体 | 営業/セールスエンジニア | 2,000〜3,000 USD |
| ベトナム全体 | 企画/事務/マーケティング/PR | 1,900〜3,000 USD |
| ベトナム全体 | 建設/土木/施工管理 | 2,500〜4,500 USD |
| ホーチミン(日系) | 営業/セールスエンジニア | 2,250〜3,225 USD |
| ホーチミン(日系) | 企画/事務/マーケティング/PR | 2,042〜2,958 USD |
| ホーチミン(日系) | コンサルティング | 2,617〜4,133 USD |
| ハノイ(日系) | 営業/セールスエンジニア | 1,700〜2,700 USD |
| ハノイ(日系) | 企画/事務/マーケティング/PR | 1,700〜2,500 USD |
| ハノイ(日系) | 建設/土木/施工管理 | 2,400〜3,929 USD |
個別の求人でレンジを確かめたい方は、給与レンジからベトナム日系企業の転職求人を比較すると条件の幅がつかめます。
この表から読み取れることを整理します。同じ営業職でも、ホーチミンは2,250〜3,225 USD(2026年9月時点、1ドル160円換算で約36万〜52万円)、ハノイは1,700〜2,700 USD(同レートで約27万〜43万円)です。上限・下限ともにホーチミンが上回ります。
差は小さくありません。約500USDのレンジ差が生じています。ホーチミンは商業・コンサル系の求人が厚く給与も高め、ハノイは製造・建設系が中心でレンジがやや下がります。レンジ差の背景にあるのは、南部と北部の産業構造の違いです。
ただし、この数字だけで判断するのは早計です。生活コストもハノイのほうが抑えられます。家賃や外食の水準が違うため、額面だけでの比較は適切でないという点は押さえておいてください。
給与以外の待遇にも触れておきます。以下は実在する求人票に記載されていた例で、一例であり全社共通ではありません。
- 社員寮・借上げ社宅(家賃・光熱費を会社負担)
- 一時帰国航空券の年2回支給
- 賞与年2回(夏季賞与・テト賞与)
- 社会保険とプライベート医療保険、医療アシスタンスサービス
- 昼食・夕食の提供、社有車による自宅と工場間の送迎
テト賞与は旧正月に合わせて支給される、ベトナムで定着した慣行です。日本の賞与とは支給時期の考え方が異なるため、年収を試算するときは支給月まで確認しておきましょう。
要点まとめ
ベトナムの日系企業求人は現地採用が中心で、給与はUSD建てが主流です。同じ営業職でもホーチミンとハノイで約500USDのレンジ差がありますが、生活コストも異なるため額面だけの比較は適切ではありません。住宅負担や一時帰国航空券などの現物支給を含めた総額で判断してください。
日系 vs ローカル・外資:働き方とカルチャーの違い
ベトナムで働くとき、応募先は日系・ローカル・外資の3つに分かれます。どれを選ぶか迷う方に向けて、日系企業を選ぶ意味を整理します。結論から言えば、言語と商習慣の面で参入障壁がいちばん低いのが日系企業です。
その根拠が語学要件です。第2章で見たとおり語学力不問が約19%あります。日本語を主体に働けるポジションが、一定数はっきり存在します。典型的なのは、日本企業のみを顧客とするBPO・オフショア拠点、日系企業向けの営業、専門性が高く通訳がつく技術職です。
日越の関係そのものも太くなっています。JETROビジネス短信:日越の人的往来に関する報道にあるとおり、両国間の人の行き来は拡大しています。日本語を使える人材の需要は、当面続くと見てよいでしょう。
日本語環境・評価制度・キャリアパスの実際
実際の働き方を、求人票の記載から具体的に見ていきます。勤務時間は8:00〜17:00が主流です。日本より始業が早く、その分終業も早い設定になっています。休日は土日祝休みが一般的です。
ただし業種による差があります。工場系では隔週土曜出勤があり、年間休日104日程度にとどまるケースがあります。一方でIT系には年間休日120日以上の求人も存在します。同じベトナムでも、年間で16日以上の開きが出るということです。
業務内容にも共通した特徴があります。日本人ポジションの中核は、ローカルスタッフのマネジメントです。求人票には「ベトナム人スタッフ約15名のマネジメント」といった記載が実在します。プレイヤーとしての実務より、現地チームを動かす役割が期待されます。
評価の考え方も押さえておきましょう。年功ではなく担当範囲と成果で見られる場面が多く、日本より早い段階で管理職相当の裁量が与えられます。マネジメント経験を積みたい方には、この点が大きな利点になります。
キャリアパスとしては、駐在員切替ありの求人が存在します。現地採用として入社し、実績を積んでから本社採用に切り替える道です。ただし切替の条件は企業ごとに異なるため、選考の段階で実績の有無を確認してください。
就労にあたっては労働許可証(ワークパーミット)が必要で、手続きは企業側が主導するのが一般的です。詳細は応募先に確認してください。
働き方と生活のバランスを軸に探したい方は、プライベートも充実できるベトナムの求人特集を見ると、条件から候補を絞り込めます。
エリア別:ホーチミンとハノイの日系求人事情
ベトナムを一つの市場として見ると、判断を誤ります。南部と北部では産業構造が異なり、同じ「日系企業」でも求人の中身が変わります。南は商業と消費、北は製造と建設が経済の軸になっているためです。
この違いは、応募先を選ぶときに直接効いてきます。どちらを選ぶかで、任される仕事の性質も、提示される給与も、住む街の環境も変わります。「ベトナムで働く」と決めた次に考えるべきは、南北どちらかという問いです。
ここからは、ABROADERS CAREER 掲載求人データ(2026年8月時点)をもとに、ホーチミンとハノイを具体的に比べます。まず全体像を表で確認してください。
ホーチミンとハノイの比較(2026年8月時点)
| 比較項目 | ホーチミン(南部) | ハノイ(北部) |
|---|---|---|
| 日系企業の求人件数 | 24件 | 19件 |
| 求人全体に占める日系比率 | 48% | 39.58% |
| 多い職種 | 営業、企画・事務、コンサルティング | 営業、企画・事務、建設・施工管理、IT |
| 営業職の給与レンジ | 2,250〜3,225 USD | 1,700〜2,700 USD |
| 向いている人 | 日系顧客への法人営業で成果を出したい人 | 技術・製造の現場をまとめたい人 |
ホーチミン(南部):商社・サービス・コンサルが中心
まず件数から確認します。ホーチミンの日系企業求人は24件です。ホーチミンの求人全体に占める日系企業の割合は48%で、およそ半数を占めます。
職種の構成は次のとおりです。営業/セールスエンジニアが48.0%、企画/事務/マーケティング/PRが28.0%、コンサルティングが12.0%、接客・カスタマーサービスが10.0%、建設/土木/施工管理が10.0%となっています。1件の求人が複数職種にまたがるため、合計は100%を超えます。
ホーチミンの日系求人は、日系顧客に向けた法人営業が主軸です。商社や専門商社、保険、コンサルティング、ITソリューションの営業といったポジションが並びます。既存顧客との関係を維持しながら、新規の日系進出企業を開拓する仕事が中心です。
なぜ対日系企業の法人営業ポジションが厚いのか。背景には現地の日系コミュニティの規模があります。ホーチミン日本商工会議所(JCCH)の活動概要によれば、会員企業は1,075社(2026年8月23日時点)にのぼります。顧客となる日系企業がこれだけ集まっているため、それを担当する営業職の需要が生まれています。
歓迎条件にも特徴があります。管理職・マネジメント経験歓迎が26%、現地在住者歓迎が24%です。勤務時間は8:00〜17:30が多く、始業・終業とも日本より早めの設定になっています。
生活面にも触れておきます。日本人が多く住むエリアは1区・7区・タオディエンです。1区は市街の中心部、7区とタオディエンは住環境が整った地区で、日本食店や日本語の通じる医療機関も集まっています。
具体的な募集内容は、ベトナム・ホーチミンの日系企業求人を見ると確認できます。
ハノイ(北部):製造・建設・ITが厚い
ハノイの日系企業求人は19件です。ハノイの求人全体に占める日系企業の割合は39.58%で、南部よりやや低い水準になります。
職種構成を見ると違いがはっきりします。営業/セールスエンジニアが37.5%、企画/事務/マーケティング/PRが22.92%、建設/土木/施工管理が14.58%、ITエンジニア(オープン系・汎用系)が10.42%、ITエンジニア(インフラ系・社内SE)が6.25%です。
注目すべきは建設・施工管理とIT系の比率です。この2分野を合わせると3割を超え、技術系のポジションが南部より厚い構成になっています。ハノイの日系求人が求めているのは、モノづくりと技術の担い手です。
実際の求人にもそれが表れています。工業団地に立地する製造業向けの営業、生産技術、購買、IT部門といったポジションが実在します。日系メーカーの生産拠点が北部に集まっていることが、この構成の背景にあります。
歓迎条件では、管理職・マネジメント経験歓迎が31.25%と南部の26%を上回ります。現場をまとめられる人材が求められているということです。あわせて高給/好条件が25%、現地採用社員活躍中が16.67%となっています。
語学の面でも差があります。語学力不問が18.75%あり、日本語主体で応募できる求人の比率は南部より高くなっています。技術職では通訳を介して業務を進める体制が組まれている場合があるためです。
ここまでを整理します。ホーチミンは「日系顧客への法人営業」、ハノイは「モノづくりと技術」。同じベトナムでも入口が違います。給与レンジはホーチミンが高めですが、生活コストと職種適性を含めて選んでください。
募集の中身は、ベトナム・ハノイの日系企業求人を探すと具体的に確認できます。
ホーチミンは日系企業求人24件・日系比率48%で法人営業が主軸、ハノイは19件・39.58%で建設とITを含む技術系が厚い構成です。管理職経験歓迎はハノイが31.25%と高く、語学力不問も18.75%あります。給与だけでなく、自分の職種適性で南北を選んでください。
ベトナムの日系企業に転職するステップ
ここまで、日系企業の進出状況、求人に多い職種、給与と待遇の相場、働き方の実際、そして南北のエリア差を見てきました。材料はそろいましたので、あとは動き方の問題です。
現地採用の選考は、日本国内での転職と流れ自体はよく似ています。書類を出し、面接を受け、オファーを受け取る。ただし確認すべき条件は増えます。ここからは、実際の手順を5つのステップに分けて整理します。
ステップ1:経験の棚卸しをする
最初にやるべきは求人検索ではありません。これまでの職務経験を書き出すことです。日本での営業、事務、施工管理、生産管理、物流といった経験は、そのまま日系企業のポジション要件になります。
第2章で見たとおり、営業と企画・事務で求人全体の6割弱を占めます。つまり日本の会社で一般的な仕事の経験が、そのまま応募資格になるということです。
「海外経験がないと無理だろう」と考える必要もありません。求人の歓迎条件には、未経験者歓迎、第二新卒歓迎、20代・30代活躍中といった項目が並びます。海外経験がなくても応募できる求人が実際にあります。
ステップ2:条件を絞って探す
求人を探すときは、国と勤務先の種類から入るのが効率的です。ベトナムという国の指定に、こだわり条件で「日系企業」を重ねます。日系企業で絞るのが最短だと考えてください。
ここからさらに条件を重ねます。語学力不問、現地在住者歓迎、年間休日120日以上など、自分にとって外せない条件を追加していきます。件数は減りますが、そのぶん検討の精度が上がります。
エリアの絞り込みも有効です。第5章のとおり、ホーチミンとハノイでは職種構成が違います。自分の経験がどちらに合うかを踏まえて選んでください。
ステップ3:応募と面接に備える(オンラインで一次面接)
選考は日本にいながら進められます。オンラインで一次面接を実施する求人があり、なかには内定まで渡航せずに完結できるものも存在します。まず現地に行かなければ始まらない、ということはありません。
面接で問われやすい質問は、ある程度決まっています。ひとつはなぜベトナムかという問いです。「海外で働きたいから」だけでは弱く、進出企業の動きや自分の経験との接点まで語れると評価が変わります。
もうひとつは、ローカルスタッフとどう働くかです。第4章で述べたとおり、日本人ポジションの中核は現地チームのマネジメントです。前職で人を動かした経験を、具体的な人数と場面で説明できるよう準備してください。
ステップ4:オファー条件を総額で確認する
オファーが出たら、基本給の数字だけを見ないでください。ベトナムの求人は現物支給が待遇の一部を占めるため、必ず総額で判断する必要があります。
確認すべき項目は5つです。住宅補助・一時帰国手当・年間休日に加えて、賞与の回数と医療保険の適用範囲を見てください。第3章で挙げた社員寮や航空券支給の例は、実際の求人票に記載されていたものです。
賞与については、支給時期も確認しておきましょう。ベトナムでは旧正月に合わせたテト賞与の慣行があり、日本とは年収の積み上がり方が異なります。
本記事で紹介した待遇は、あくまで求人票に記載されていた一例です。住宅補助の有無も賞与の回数も、企業ごとに大きく異なります。応募前に求人票を、入社前に雇用契約書を、それぞれ必ず自分の目で確認してください。
ステップ5:渡航前の準備を進める
内定後は就労の手続きに入ります。ベトナムで働くにはWork Permit(労働許可証)が必要です。Work Permitは企業がスポンサーとなって手続きを進めるのが一般的ですので、必要書類の案内を待って対応してください。
並行して生活の準備を進めます。住居の手配、銀行口座の開設、日本語や英語が通じる医療機関の確認の3点は、着任直後に必要になります。会社が社宅を用意する場合は、いつから入居できるかを先に確認しておきましょう。
渡航時期は、企業の受け入れ体制と手続きの進み方で決まります。現職の退職日を早々に確定させず、見通しが立ってから調整するほうが安全です。
5つのステップのうち、応募前に自分でできるのは経験の棚卸しと条件の絞り込みです。この2つを済ませておけば、求人が出たときにすぐ動けます。オファー段階では、基本給ではなく手当を含めた総額で比べてください。
最後に、動き出す順番についてお伝えします。準備を整えてから求人を探すのではなく、先に求人を見てください。
条件のリアルを知ることが、判断の精度を上げる最短の方法です。給与の幅、求められる経験年数、語学要件、休日の日数。これらは実際の募集要項を読まないと分かりません。
まずは掲載中の求人に目を通すところから始めてください。応募するかどうかは、そのあとで決めれば十分です。ベトナム日系企業の転職求人をチェックすると、この記事で扱った条件が実際にどう書かれているかを確認できます。
要点まとめ
ベトナムの日系企業への転職は、経験の棚卸し、条件を絞った求人検索、オンライン面接への準備、オファーの総額確認、渡航準備の5ステップで進みます。日本での営業・事務・施工管理などの経験がそのまま要件になり、海外経験がなくても応募できる求人があります。Work Permitは企業側が主導するため、まず求人の条件を確認するところから始めてください。
筆者からのコメント
日系・ローカル・外資で迷ったら、まず日系企業の求人から見ることをおすすめします。日本語で働ける枠が実際にあり、選考も日本の商習慣に近い形で進むためです。年間休日は業種で大きく変わりますので、勤務時間と休日の記載は求人票で必ず確認してください。