天津で税理士・会計士の需要が高まっている背景
この記事は、中国・天津で税理士や会計士としてのキャリアを検討している方に向けて、制度と実務の両方を整理したものです。中国で会計・税務の仕事に就くには、工作許可の区分、中国の会計資格制度、増値税をはじめとする税制、そして個人所得税と社会保険の扱いを知っておく必要があります。同時に、天津でどのような職務が求められ、生活費がどの程度かかるのかという実務面も、判断の材料になります。本記事は制度と実務の両面を押さえることを目的に、順に整理していきます。中国全体の就労ビザや都市別の事情については、中国転職の総合ガイド(就労ビザ・都市別の求人事情・税金と社会保険)もあわせてご覧ください。
日系企業の集積と国際化が生む税務・会計ニーズ
天津で税務・会計の人材が求められる背景には、日系企業の集積があります。天津経済技術開発区(TEDA)を中心に製造業を軸とした日系の現地法人が集まり、これらの企業は日本本社の要求と中国の会計制度の双方に対応できる人材を必要としています。国際取引が増えるほど、その難度は上がります。
需要の中身を職務レベルで見ていきます。中心になるのは月次決算と本社レポーティングです。中国の会計基準(企業会計準則)で締めた数字を日本の連結基準に組み替え、本社への日本語レポーティングまで完結できる人材は多くありません。ここが日本人ポジションの中核になります。
次に発票(ファーピャオ)の管理です。中国の増値税は発票を基礎に仕入税額控除が組み立てられるため、発行・受領・保管の運用がそのまま納税額に影響します。電子発票への移行も進んでおり、システム面の理解も求められます。
日本本社との取引がある企業では、移転価格文書の作成も課題になります。加えて、法定監査への対応、そして税務局とのやりとりが日常業務に入ります。いずれも日本の会計実務の知識だけでは完結せず、中国側の制度理解とセットで初めて回る仕事です。
受け皿となる会計事務所も天津に存在します。中国注册会計師協会(CICPA)が公表する会計師事務所綜合評価百家排名には、天津広信有限責任会計師事務所などの地場事務所が名を連ねており、全国上位の規模を持つ事務所が天津にもあることは中国注册会計師協会による会計事務所の綜合評価ランキングで確認できます。
ここがポイント
天津で求められているのは、資格そのものより担当できる職務の範囲です。中国基準での月次決算、発票を軸にした増値税の管理、日本本社へのレポーティング、移転価格文書の作成、法定監査対応が中心になります。日系の現地法人が集積しているため、日中双方の会計実務を説明できる人材の需要が続いています。
求められる資格・専門知識・語学力
中国の会計資格について最初に押さえておきたいのは、資格制度は2つあるという点です。日本語で書かれた情報ではしばしば混同されていますが、両者は主管する機関も位置づけも異なります。
1つ目は会計専業技術資格試験、いわゆる会計職称です。初級・中級・高級の3段階があり、企業内で会計を担当する人材の技術等級を示す制度です。
この試験は、2024年6月1日から中国に合法的に就労・滞在する外国人も中国国内の受験生と同じ制度で受験できるようになりました。開放の経緯は外国人への会計専業技術資格試験開放を報じた人民網日本語版が伝えており、通知の中身は会計資格試験の外国人開放通知を日本語試訳した松田健輔事務所の記事で日本語の試訳を確認できます。
2つ目は注册会計師(中国CPA)です。CICPAが実施する別の資格試験で、監査業務に必要な国家資格にあたります。会計職称とは制度そのものが違いますので、求人票の資格要件がどちらを指しているかは応募前に確認してください。
日本の資格の扱いにも注意が必要です。日本の公認会計士・税理士の資格は、中国国内での業務資格として自動的には認められません。ただし、日本での会計・税務の実務経験そのものは、日系現地法人では強く評価されます。資格が通用するかどうかと、経験が評価されるかどうかは別の話です。
語学は「中国語ができると良い」という話ではなく、何に使うかで必要な水準が決まります。中国語のビジネスレベルが求められるのは、税務局との折衝、発票システムや申告ソフトの画面操作、そして現地スタッフのマネジメントの3場面です。
一方の日本語は、本社への報告と日本人駐在員との調整で使います。同じ内容を中国語と日本語の双方で説明できることが、日本人ポジションの前提条件になります。香港や台湾での勤務経験がある方は、中華圏の商習慣に触れている点が評価される場面もあります。
制度が複雑になるほど、専門知識を持つ人材の必要性は高まっています。財務・会計の専門性をどこで活かすかを考える段階では、海外の財務・会計・経理職の求人一覧で職種軸から条件を見比べてみてください。中国に関する情報は中国の転職情報コラム一覧にまとめています。
天津で働く税理士・会計士のキャリアパターン
天津の日系・外資系企業で会計や税務を担当している日本人には、いくつかの典型的な入り方があります。1つ目は、日本の事業会社で経理経験を積み、現地法人の経理マネージャーとして赴任するパターンです。2つ目は、日本の会計事務所や監査法人から、中国拠点の日系企業支援チームへ移るパターン。3つ目は、中国語人材として現地採用で入り、経理実務を通じて専門性を積み上げていくパターンです。どの経路をたどるかで、待遇も就労ビザの区分も変わります。本章では、この3つの型を前提に、現地で成果を出している人の共通点と、応募前に確認すべき事項を整理します。
ここがポイント
天津で会計・税務を担当する日本人の入り方は、大きく3つに分かれます。日本の事業会社から現地法人へ赴任するパターン、会計事務所や監査法人から中国拠点の日系企業支援へ移るパターン、そして中国語人材として現地採用で入り専門性を積み上げるパターンです。どの経路を通るかで、待遇と就労ビザの区分が変わります。
現地で成果を出している人に共通する3つの条件
天津で長く続いている人に共通するのは、抽象的な国際感覚ではありません。日々の業務で実際に効いている習慣が3つあります。
1つ目は、制度の変更に追随し続ける習慣です。中国の税制は動きが速く、増値税法の施行や外国籍個人の免税手当の期限など、数年単位で前提が変わります。前任者の引き継ぎ資料をそのまま使い続けていると、古い前提のまま処理していたという事態が起こります。
2つ目は、日本本社と現地の間に立って説明できることです。会計基準の違い、監査要件の違い、決算スケジュールの違いを、日本語で本社に、中国語で現地スタッフに、それぞれ噛み砕いて伝える役割になります。数字を作る力より、数字の背景を両方向に翻訳できる力が問われます。
3つ目は、税務局・会計事務所との関係構築です。発票への対応や税務調査の場面では、書面のやりとりだけで完結しないことがあります。日頃から相談できる相手を持っているかどうかで、解決までにかかる時間が変わります。
あわせて押さえておきたいのが雇用形態による違いです。駐在員と現地採用では、待遇も年金の扱いもビザの区分も大きく異なります。同じ職務内容でも手取りと将来受け取る年金額が変わりますので、比較の観点は駐在員と現地採用の違いを給与・年金・ビザ・キャリアの4軸で比較で確認してください。
日系企業側のポジションが実際にどう定義されているかは、日系企業の海外経理・財務ポジションで職務要件を見比べるとつかめます。
応募前に必ず確認しておきたい6つのポイント
応募に進む前に、確認しておきたい項目が6つあります。順に見ていきます。
1. 資格と実務経験の確認
中国で会計・税務の業務に就く際の資格要件は、地域ごとに規定が異なります。北京市がアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、シンガポールなどの資格を認めている件がよく引用されますが、これは北京市の制度であり、天津とは別です。天津での取り扱いは、天津の関連機関に直接確認してください。
2. 語学水準の確認
業務の大半は中国語で進みます。求人票に中国語上級とあるとき、それが読み書き中心なのか、税務局との折衝まで含むのかで必要な水準は変わります。面接の段階で、どの場面で中国語を使うのかを具体的に聞いてください。
3. 求人情報の出所と鮮度
中国の求人情報は、掲載から時間が経っているものが少なくありません。求人情報の出所と鮮度を必ず確認することが、無駄な応募を減らす近道になります。掲載日と、募集主体が企業直か仲介かの2点は最初に見てください。
4. 労働契約と社会保険の扱い
労働契約の内容を書面で確認するのは前提として、中国で見落とされやすいのが社会保険です。外国人も原則として中国の社会保険に加入する義務があります。
ただし、日中社会保障協定(2019年9月1日発効)により、日本から派遣される駐在員は年金・雇用保険について最長5年間の適用免除を受けられます。適用には日本側での手続きが必要ですので、社会保険の扱いは契約前に確認するようにしてください。
5. 就労可能な年齢要件
2026年に入り、北京や上海などで60歳を超える方の工作許可の更新が原則として認められにくくなる運用が見られます。地域差があり流動的ですが、工作許可の年齢要件はシニア層にとって実務的な制約になり得ます。応募前に、更新の見通しを企業側へ確認しておくことをおすすめします。
6. 生活環境と健康管理
医療機関へのアクセス、住居、生活費の水準は、着任後に働き続けられるかどうかを左右します。この点は具体的な数字とあわせて後の章で扱います。
これまでの経験を軸に条件を見比べたい方は、マネジメント経験を活かせる海外経理求人と経験者向けのシニアレベル海外求人特集をあわせてご覧ください。
注意
労働契約は必ず書面で内容を確認してください。とくに社会保険の扱いは、オファーの手取り額に直結します。外国人にも中国の社会保険への加入義務がありますが、日中社会保障協定により、日本から派遣される駐在員は年金・雇用保険について最長5年間の適用免除を受けられます。適用には日本側での手続きが必要ですので、契約前に企業の担当者へ確認してください。
天津で働くために押さえる法律と制度
ここでは、天津で働くうえで押さえておくべき制度を3つの領域に分けて整理します。就労資格(外国人来華工作許可と居留許可)、税制と会計基準、そして社会保険です。いずれの領域も直近2年で変更がありました。増値税は新法が2026年1月1日に施行され、工作許可は2026年に入って一部都市で運用が厳格化しています。古い情報のまま準備を進めると、手続きの段取りも手取りの見込みも崩れます。
就労資格:外国人来華工作許可と居留許可
まず制度名から確認します。かつての「外国人就業許可証」と「就業証」は、現行の名称ではありません。2016年の試行を経て、2017年4月1日から全国で外国人来華工作許可制度に統一されました(根拠は外専発[2017]40号)。制度の全体像はジェトロがまとめた中国の外国人就業規制と在留許可の解説で確認できます。
この許可は、年収・学歴・職歴・年齢などをポイントで評価し、A類・B類・C類に区分されます。区分によって審査の扱いや在留期間が変わりますので、内定の段階でどの類で申請されるのかを確認しておくと見通しが立ちます。
手続きの流れは次のとおりです。まず雇用企業が「外国人来華工作許可通知」をオンラインで申請します。次に、在外の中国大使館・領事館でZビザを取得して入国します。入国後は、15日以内に外国人工作許可証を申請し、30日以内に就労類の居留許可を申請します。申請書類の具体は北京市政府日本語版が公開する外国人就労許可の申請ガイドが詳しく、基本的な流れは天津でも共通します。
ここが最も誤解の多い部分です。工作許可証と居留許可は別の手続きであり、期限も別に設定されています。どちらか一方を済ませれば足りるという性質のものではありません。着任直後の2週間から1か月は、この2つの手続きが並行して動くと考えておいてください。
運用面の変化も押さえておきます。2024年12月以降、工作許可の情報は電子社会保障カードへ順次統合されており、カード1枚で就労情報を管理する方向に動いています。
もう一点、年齢に関する動きがあります。2026年に入り、北京や上海など主要都市で60歳を超える方の工作許可の更新が原則として認められにくくなる運用が生じています。運用には地域差があり流動的ですので、該当する年代の方は個別に確認が必要です。実務上の状況は60歳以上の外国籍人員に対する工作許可の運用厳格化を扱ったマイツのレポートが整理しています。
職種による傾向としては、会計・税務の専門職は外商投資企業(外資系企業)での雇用実績が比較的多い職種にあたります。ただし、それが許可の取得しやすさを保証するものではありません。都市ごとの就労ビザの条件感をつかみたい方は、深センの就労ビザ取得条件に関するQ&Aも参考になります。
税制・会計基準・社会保険の基礎知識
まず訂正から入ります。日本語の情報でしばしば見かける「増値税の標準税率は17%」という記述は、現行の制度を反映していません。増値税の標準税率は17%ではありません。現在の税率は13%・9%・6%の3段階で、取引の種類によって適用が分かれます。区分の詳細はジェトロによる中国の増値税率区分の整理で確認できます。
制度そのものも変わりました。2024年12月25日に「中華人民共和国増値税法」が可決され、2026年1月1日から施行されています。31年間運用されてきた増値税暫定条例は廃止され、実施条例は2025年12月30日に公布されました。変更点は増値税法の実施条例と2026年1月適用の変更点に関するEYの解説にまとまっています。
増値税の実務で中心になるのが発票(ファーピャオ)です。売上の計上も仕入税額控除も発票を根拠に組み立てられるため、発行・受領・保管の管理がそのまま納税額に影響します。天津の日系現地法人で経理を担当する場合、日常業務の多くの時間がこの発票の管理に割かれます。
法人と個人の税率も確認しておきます。企業所得税の標準税率は25%です。個人所得税は3%から45%までの累進課税で、所得の区分ごとに税率が決まります。
会計基準については、中国企業会計準則が国際財務報告基準(IFRS)と多くの点で整合しています。会計年度は1月1日から12月31日までです。ただし、すべての企業に年度監査が義務づけられているわけではなく、企業の類型や規模により監査の要否と範囲が異なります。実務上の整理はEYが2026年7月に公開した中国の会計・監査・税務ガイドが詳しいです。
要点まとめ
増値税は13%・9%・6%の3段階で、17%という記述は現行制度ではありません。2024年12月25日に可決された増値税法が2026年1月1日から施行され、暫定条例は廃止されました。企業所得税の標準税率は25%、個人所得税は3%から45%の累進課税です。会計年度は1月1日から12月31日までで、年度監査の要否は企業の類型や規模によって異なります。
ここから、駐在員の手取りに直結する制度に入ります。外国籍個人の免税手当です。住宅手当、語学研修費、子女教育費などが対象で、財政部・税務総局公告2023年第29号により2027年12月31日まで適用が延長されました。延長の経緯は外国籍個人の手当に対する個人所得税優遇の延長を伝えるジェトロのビジネス短信が伝えています。
注意が必要なのは、この免税手当が専項附加扣除(特別追加控除)との選択適用である点です。両方を同時に使うことはできず、一度選択すると当該納税年度内は変更できません。どちらが有利かは所得構成と家族状況で変わりますので、赴任前に試算しておくべき項目です。実務上の論点はPwC中国による外国人駐在員向け個人所得税の実務解説が整理しています。
個人所得税の申告実務そのものについては、天津に拠点を置く大野木総合会計事務所による中国個人所得税の実務解説が現地の運用に即した説明をしています。
社会保険は、外国人にも加入義務があります。ただし日中社会保障協定(2019年9月1日発効)により、日本から派遣される駐在員は年金と雇用保険について最長5年間、中国側の適用免除を受けられます。ここで区別が必要なのは雇用形態です。現地採用で就職する場合、この適用免除の対象にはなりません。年金の扱い全般は海外就職する際の年金の扱いについてもあわせてご覧ください。
制度の理解は、そのまま担当できる職務の幅に直結します。専門資格を活かす選択肢を広く見たい方は、税理士・会計士など士業の海外求人で条件を比較してみてください。
天津での暮らしと働き方
ここまでは制度の話でした。ここからは、実際に天津で暮らすとどうなるかへ視点を移します。扱うのは2つです。家賃・交通費・食費といった生活コストと、現地で仕事を回すために必要な人間関係の作り方です。なお、以下の円換算は2026年9月時点の為替レート(1元=約23.8円)によるものです。為替は変動しますので、金額は元建てで把握しておいてください。
生活費・住居・交通の実態
以下に挙げる金額は、いずれも目安です。元建ての水準についても公的な出典があるわけではありませんので、幅のある数字として読んでください。円換算は2026年9月時点の換算によるもので、為替が動けば円ベースでの負担感は変わります。
まず家賃です。市の中心部にあたる和平区・河西区では、1LDKの月額家賃が約5,000元(約11万9,000円)程度が目安になります。
郊外の津南区・西青区まで出ると、同等の物件が約3,000元(約7万1,000円)程度で見つかることもあります。実際の募集条件や間取りは天津の日本人向け賃貸物件情報(エイブルネットワーク天津店)で確認できます。
交通費は日本と比べてかなり安く収まります。地下鉄の初乗りは約2元(約48円)、長距離の移動でも10元(約238円)程度です。路線バスは1元(約24円)から始まり、距離に応じて上がります。地下鉄は比較的新しく清潔で、地下鉄と路線バスで市内の移動はほぼ完結しますので、車を持たずに生活できます。
食費は選び方で大きく変わります。地元の市場や食堂を使えば1日30元(約715円)程度で収まりますが、外国人向けのレストランや輸入品を扱うスーパーを使うと、同じ1日で100元(約2,380円)以上かかることもあります。
まとめると、家賃を除いた月々の生活費は2,000〜5,000元、円換算で約4万8,000円から11万9,000円が目安です。これに家賃を加えると総額は5,000〜10,000元、家賃込みで月11万9,000円から23万8,000円程度の幅になります。オファーを比較するときは、額面だけでなくこの生活コストを差し引いた実質額で見てください。
注意
本記事の円換算は、2026年9月時点の為替レート(1元=約23.8円)による目安です。為替は日々変動しますので、実際の負担感は時期によって変わります。また、元建ての金額そのものも物件や生活スタイルによって幅がありますので、オファーを検討する段階では現地の最新の相場をご自身で確認してください。
現地の文化とネットワークの築き方
天津は相声が盛んな街として知られています。相声そのものの発祥は北京ですが、天津の寄席文化は独自の厚みを持っています。街並みには旧租界地の西洋建築が残り、狗不理包子や耳朵眼炸糕といった地元の食べ物も定着しています。休日の過ごし方に困る街ではありません。
ここからは、会計・税務の仕事に固有のネットワークの話をします。最初の接点になりやすいのが、天津日本人会や商工会系の日系企業コミュニティです。同じ立場の駐在員や現地採用の経理担当が集まるため、実務の相談相手を見つけやすい場になります。
次に、現地の会計事務所や税務代理機構との接点です。発票の扱いや税務調査への対応で外部に相談する場面は必ず出てきますので、日頃から窓口を持っておくと初動が速くなります。
もう一つ見落とされがちなのが、税制改正のたびに開かれる説明会やセミナーが情報源であり、人脈形成の場にもなるという点です。増値税法の施行のような大きな改正があると、会計事務所や商工会が解説の場を設けます。制度の最新情報を得ながら、同業の担当者と顔をつなぐ機会になります。
中国語は、渡航後に伸ばす前提で構いません。業務で使う語彙は現場で覚えるほうが早く、社内に教材が用意されているわけでもありませんので、学習の進め方は渡航後の中国語学習方法についてのQ&Aを参考にしてください。
中国語が使えるようになると、選択肢は中国国内にとどまりません。中国語が活きる台湾の会計・経理求人のように、中華圏の他の市場でも経験が通用します。台湾での進め方は台湾・台中での会計・経理職の求人と転職の進め方で具体的に整理しています。
転職活動の進め方
前章までで、制度と生活の輪郭は見えたはずです。ここからは、それを実際の転職準備にどう落とし込むかを扱います。中国の会計・税務職で評価されるのは、資格の名前そのものよりも決算を回した経験や本社レポーティングの経験といった、担当してきた業務の中身です。本章では、準備から入社までの流れと、求人の探し方・エージェントの選び方の2つに分けて整理します。
準備から入社までの流れ
準備から入社までを、6つの段階に分けて整理します。
1. 自己分析と職務の棚卸し
最初にやるべきは求人検索ではなく、自分の担当業務を書き出す作業です。中国の会計・税務実務で評価されるのは、抽象的な強みではありません。決算を回した経験、本社へのレポーティング、監査対応といった具体的な担当業務と、その規模です。担当した会社の売上高や従業員数まで含めて棚卸ししてください。
2. 応募書類の作成
日本語の職務経歴書に加えて、英語または中国語のレジュメを用意します。
書き方の要点は数字です。担当した会社規模と決算の担当範囲を数字で書くと、読み手に評価軸がそのまま伝わります。月次・四半期・年次のどこまでを担当したのか、使用した会計システムは何かまで具体的に記載してください。
3. 資格・語学の証明を揃える
日商簿記、USCPA、日本の税理士・公認会計士資格、HSK、TOEICなどの証明書を揃えます。前章までで述べたとおり、日本の資格が中国国内の業務資格として自動的に認められるわけではありませんが、実務経験を裏づける材料としては有効です。
4. 面接対策
面接では結論から述べ、具体的なエピソードで裏づける構成が有効です。中国のビジネス慣行にどう適応するかも問われます。ここで注意したいのが語学です。語学レベルは正直に申告するようにしてください。過大に申告すると、入社後の業務で必ず露呈します。
5. オファー内容の確認
確認すべき項目は複数あります。給与の通貨と支払い地、住宅手当、帰国費用、社会保険と日中社会保障協定の適用範囲です。あわせて免税手当の扱いをオファーの段階で確認するようにしてください。前章で述べたとおり専項附加扣除との選択適用になりますので、手取り額が変わります。
6. 工作許可・居留許可の手続き
就労資格の申請主体は企業側です。ただし、入国後15日以内の工作許可証、30日以内の居留許可という期限は、ご自身でも把握しておいてください。着任直後にこの2つの手続きが集中します。
6ステップの一覧
天津での会計・税務職への転職は、棚卸しから就労資格の取得まで6段階で進みます。各段階で確認すべきことを一覧にまとめました。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 棚卸し | 決算・本社レポーティング・監査対応を規模とともに書き出す |
| 書類作成 | 日本語の職務経歴書と、英語または中国語のレジュメを用意する |
| 証明の準備 | 日商簿記・USCPA・税理士・公認会計士・HSK・TOEICなどの証明書 |
| 面接 | 結論から述べ、語学レベルは正直に申告する |
| オファー確認 | 給与の通貨と支払い地、免税手当、社会保険、住宅手当、帰国費用 |
| 就労資格 | 企業が申請。入国後15日以内に工作許可証、30日以内に居留許可 |
ここがポイント
応募書類には5つを必ず入れてください。1つ目は担当した会社の規模(売上高・従業員数)。2つ目は決算の担当範囲(月次・四半期・年次のどこまでか)。3つ目は使用した会計システム。4つ目は本社レポーティングや監査対応の有無。5つ目は現地スタッフのマネジメント人数です。いずれも数字で書けると、読み手に評価軸がそのまま伝わります。
求人の探し方とエージェントの選び方
求人を探すとき、地域で絞り込むところから入ると候補がすぐに枯れます。おすすめは、職種軸や業界軸から入るやり方です。
職種軸なら財務・会計・経理、あるいは士業。業界軸なら会計事務所・コンサルティング、金融、商社といった切り口になります。たとえば会計事務所・コンサルティングファームの海外求人や金融業界の海外財務・経理ポジションから見ていくと、地域で絞り込むより候補の幅が広がります。
求人票で確認すべき項目も決まっています。担当する決算の範囲、レポーティング先が現地なのか日本本社なのか、業務で使う言語の比率、現地スタッフのマネジメントの有無、そして駐在員扱いか現地採用かです。最後の項目は待遇と年金の扱いを左右しますので、必ず確認してください。
求人情報は入れ替わりの早い分野です。一度見て終わりにせず、条件を保存して定期的に確認する運用に切り替えてください。
中国国内の求人は、時期によって掲載数が限られます。地域を限定しすぎないことも一つの戦略です。中華圏では台湾や香港、日系企業の会計・税務求人が厚い市場としてはシンガポールの財務・会計職求人があります。会計・税務の経験がどう評価されるかはシンガポール転職で会計・税務の経験が有利になる理由で整理しています。
現地にどのようなプレイヤーがいるかを知っておくことも、市場の理解に役立ちます。天津には大手監査法人の拠点があり、KPMG中国の天津事務所による現地日系企業向けサービス案内を見ると、現地の日系企業向けにどのようなサービスが提供されているかが分かります。
エージェントを使う場合の判断基準は4つです。会計・税務分野の専門性があるか、現地のネットワークを持っているか、多言語に対応できるか、そして書類作成から面接、就労ビザの手続きまでの一貫支援の有無です。
エージェントを選ぶときは、次の4点を確認してください。
エージェント選びの確認項目:
- 会計・税務分野の専門性があるか
- 中国および中華圏の現地ネットワークを持っているか
- 日本語・英語・中国語に対応できるか
- 書類作成から面接、就労ビザの手続きまで一貫して支援するか
最後に2点だけ確認しておきます。1つ目は、応募前には必ず最新の制度を確認することです。増値税法の施行、免税手当の期限、工作許可の年齢要件と、この2年だけでも前提が複数回変わっています。2つ目は、勤務地を天津だけに固定せず、職種軸で選択肢を広げて比較することです。同じ職種の他地域の情報は財務・会計・経理職の海外転職コラム一覧にまとまっています。
※他社サービスの求人情報も併せて確認したい方は、他社サービスの天津オフィスワーク求人ページなどを参照してください。
筆者からのコメント
この章で挙げた数字は、いずれも執筆時点で確認したものです。中国の制度は動きが速く、増値税法の施行、免税手当の2027年12月31日までの延長、工作許可の年齢要件の運用など、ここ2年だけでも前提が何度か変わっています。赴任や転職を具体的に検討する段階になったら、税率も期限も必ずご自身で最新の情報を確認してください。とくに免税手当と専項附加扣除のどちらを選ぶかは手取りが変わる話ですので、企業の担当者か現地の会計事務所に相談することをおすすめします。