東南アジアを中心とした日本人向けの海外求人・海外就職なら、ABROADERS CAREER(アブローダーズキャリア)

  • 香港

香港で働く日本人のリアル|就労ビザ・薪俸税・手取りの実際

目次

    夕暮れのビクトリア・ハーバーと香港島の高層ビル群

    香港で働く日本人は、いま増えている

    香港・中環の交差点を行き交う通勤者

    「香港で働く」という選択肢を調べ始めた方の多くは、ひとつの疑問を抱えています。2020年前後の報道を目にして、「香港はもう働く場所として選ばれなくなったのではないか」という疑問です。

    実際のところ、日本語で読める香港の就労情報の多くは2020〜2022年に書かれたもので、その後の変化が反映されていません。本記事は、この空白を感想ではなく統計と制度で埋めることを目的としています。外務省・香港政府・ジェトロの公表データをもとに、2026年時点の状況を整理しました。

    対象は金融業界に限りません。商社、物流、小売なども含めて、香港で働くという選択肢の全体を扱います。

    在留邦人23,228人──中華圏で唯一、増加に転じた都市

    外務省の統計によると、2025年10月1日時点で、香港の在留邦人数は23,228人です。前年から351人、率にして1.5%の増加で、都市別では世界10位に位置します。

    出典:外務省「海外在留邦人数調査統計」(令和7年10月1日現在)

    在留邦人数とは、3か月以上滞在する長期滞在者と永住者を合わせた数です。駐在員とその家族だけでなく、現地採用で働く人や、香港に生活基盤を移した人も含まれます。

    前年比1.5%という数字だけを見ると、小さな変化に思えます。しかし推移を並べると、意味が変わります。香港の在留邦人数は2021年をピークに4年間減り続け、2025年に初めて増加へ転じました

    在留邦人数 前年比
    2021年 24,097人 +1.3%
    2022年 23,166人 −3.9%
    2023年 22,930人 −1.0%
    2024年 22,877人 −0.2%
    2025年 23,228人 +1.5%

    同じ時期の中華圏の他都市は、いずれも減少しています。上海は31,733人で前年比8.5%減、北京は4,534人で7.7%減、蘇州は4,296人で12.7%減。中国全体でも92,928人と、4.7%減少しました。この流れのなかで、香港は中華圏で唯一、明確に増加へ転じています

    ただし、増加幅は年間351人にとどまり、ピークだった2021年の24,097人にはまだ戻っていません。数字を正確に読むなら、「回復し始めた」であって「戻った」ではありません。それでも、4年続いた減少が止まって反転したという事実は、香港で働くことを検討するうえでの出発点になります。

    香港に住む日本人の実数や、日本人コミュニティの様子については、次のページでも解説しています。

    香港にはどのくらい日本人がいるのか、コミュニティはあるのか

    なお、ABROADERS CAREER では現在、香港国内の求人はお取り扱いがありません。本記事は香港で働くことを検討する方に向けた情報整理としてお読みください。

    ここがポイント
    ポイント

    香港の在留邦人は4年連続の減少を経て、2025年に増加へ転じました。上海・北京・蘇州など中華圏の他都市が減少を続けるなか、反転したのは香港だけです。単年の増減ではなく周辺都市との対比でこの差が生じている点は、見ておく価値があります。

    金融だけではない──9,960拠点が示す仕事の広がり

    香港・葵青コンテナターミナルに積まれたコンテナとガントリークレーン

    働く場所としての香港を判断するうえで、在留邦人数と並んで見ておきたいのが、企業拠点の数です。香港政府統計処の調査によると、香港域外に親会社を持つ企業の在香港拠点数は9,960社で過去最多となりました(2024年6月時点、前年比10.2%増)。地域統括本部・地域拠点・現地拠点のいずれの区分でも、前年から増加しています。

    出典:ジェトロ「香港の貿易投資年報」

    このうち、日系企業は1,430社です(2024年時点)。

    出典:在香港日本国総領事館「日本・香港関係7つの豆知識」

    1,430社の顔ぶれは、金融に偏っていません。商社、物流、小売、外食、メーカーといった業種が、香港に地域統括機能を置いています。金融はそのなかのひとつの業種にすぎません。

    背景には、香港の産業構造があります。香港自体は製造拠点ではありません。中国華南の製造集積と東南アジアの市場を同じ商流で扱える位置にあり、調達・物流・販売の結節点として機能しています。このため日本人に求められる職種も、貿易実務、物流管理、地域統括の管理部門、店舗開発、マーケティングなど、金融以外に広く分布しています。

    一方で、企業側の実感には厳しさも見えます。ジェトロが2025年1月に実施した「香港を取り巻くビジネス環境にかかるアンケート調査」(第15回)では、1年前と比べて「事業コスト」が悪化したとの回答が41.1%、「人材確保」が悪化したとの回答が28.1%にのぼりました。

    つまり、拠点数は過去最多だが、企業側のコスト感と採用難は強まっているというのが現状です。この非対称が、香港の求人を「多いが、誰でも通るわけではない」状態にしています。募集の母数は確かに存在する一方で、企業は採用に慎重になっており、職種経験との合致がこれまで以上に問われます。

    香港以外も含め、アジアで日本人を採用している外資系企業の求人は、次の特集から確認できます。

    アジアの外資系企業の求人特集

    注意
    注意

    拠点数や企業数は市場全体の規模を示す数字であり、日本人向けポジションの数を直接示すものではありません。実際の求人の量は業種・職種によって差が大きく、時期によっても変動します。個別の求人動向は、検討している業界ごとに確認してください。

    香港の給与は「額面」だけでは比較できない

    電卓と書類が置かれたデスク

    香港の求人票に書かれた金額を、日本の年収とそのまま比べても、実態はつかめません。所得税の仕組み、社会保険料の計算方法、住居費の水準という、手取りを決める構造そのものが日本と大きく異なるからです。

    この章では、額面から手取りまでの間に何が起きるかを、制度の側から整理します。取り上げるのは、給与所得にかかる薪俸税、強制加入の積立年金制度であるMPF、そして残った手取りを削る住居費です。

    なお、具体的な給与額や生活費の金額は、この記事では扱いません。職種や生活スタイルによる個人差が大きく、裏付けとなる一次情報が存在しないためです。日本と比べた相場感は、次のページで確認できます。

    日本と比較した香港の給与相場

    薪俸税──源泉徴収がなく、2つの計算方式の低いほうが適用される

    香港で給与所得にかかる税は、薪俸税(Salaries Tax)と呼ばれます。課税年度は4月1日から翌年3月31日までで、暦年単位で計算する日本の所得税とは区切りがずれています。

    日本の会社員の感覚と最も違うのは、納め方です。香港では給与からの源泉徴収がありません。毎月の給与から所得税が天引きされることはなく、年に一度、本人が申告して後から納付します。

    さらに、前年の所得をもとに翌年度分を先払いする「暫定薪俸税(provisional salaries tax)」という仕組みがあります。着任1年目は納付が発生せず、2年目に1年目分の確定額と2年目分の暫定額をまとめて請求されるのが典型的な流れです。このため、着任1年目と2年目で納税の感覚が大きく変わります。渡航前に必ず理解しておきたいポイントです。

    出典:香港政府 GovHK「薪俸税の計算方法」

    税額の計算方法は2通りあります。ひとつは累進税率です。課税所得純額(総所得から控除と免税額を差し引いた額)に対して、HK$50,000ごとに2%・6%・10%・14%・17%の5段階で課税されます。もうひとつは標準税率です。免税額を差し引く前の所得純額(総所得から控除のみを差し引いた額)に課税され、2024/25課税年度からは最初のHK$500万に15%、超過分に16%の二段階制になっています。

    どちらで納めるかを納税者が選ぶのではありません。税務局が両方を計算して、低いほうを適用します

    出典:香港政府 GovHK「薪俸税・個人所得課税の税率」

    基本免税額は、2025/26課税年度でHK$132,000です。免税額は毎年の財政予算案で見直されるため、実際に計算する際は、その年度の数値を確認する必要があります。

    また、香港には消費税がなく、株式などの売却益にかかるキャピタルゲイン課税もありません。課税されるのは香港源泉の所得に限られるため、海外源泉の所得も原則として課税対象外です。

    ここまでを整理すると、額面が同じなら、香港のほうが日本より手元に残る額は大きくなりやすい、といえます。ただし、その差は次に述べる住居費に吸収されていきます。税だけを見て判断すると、誤ります。

    注意
    注意

    香港の薪俸税は毎月の給与から天引きされないため、納付時期に向けて納税資金を自分で確保しておく必要があります。特に着任初年度の翌年は、確定分と暫定分の請求が重なり、想定外の納付が発生しやすいタイミングです。税制は年度ごとの財政予算案で改定されます。最新の税率・免税額は香港政府の公式サイトでご確認ください。

    MPFの上限と、それを削り取る住居費

    密集する香港の高層ビルを見上げた構図

    香港の公的年金にあたるのが、MPF(強制性公積金)です。雇用主と従業員が、それぞれ「有関入息」(給与など拠出計算の対象となる収入)の5%を毎月拠出します。

    ただし、この5%には上下限があります。月収HK$7,100未満の場合、従業員本人の拠出は不要です(雇用主側の5%拠出は続きます)。逆に、月収HK$30,000を超える部分は計算の対象外です。つまり、拠出額は労使それぞれ月HK$1,500、年間HK$18,000で頭打ちになります

    出典:香港 積金局(MPFA)「従業員の強制性拠出」

    この設計が意味することは明確です。拠出額に上限があるため、年収が高くなるほど、社会保険負担が収入に占める割合は下がっていきます。報酬に応じて保険料が伸びていく日本の厚生年金・健康保険とは正反対の設計で、香港で所得の高い層ほど手取りが厚くなる最大の理由のひとつです。

    この上下限は、下限が2013年、上限が2014年の改定以降据え置かれており、12年以上変わっていません。積金局は2026年3月、労働顧問委員会に対して、下限をHK$10,500、上限をHK$40,000へ引き上げる案を提示しました。上限が引き上げられれば、拠出の上限は月HK$2,000になります。2026年半ばに政府へ報告書が提出される予定で、実施には立法手続きが必要です。2026年3月時点では、現行ルールが有効です。

    もうひとつ確認しておきたいのが、加入義務の範囲です。海外の退職金制度でカバーされている外国人や、香港での滞在許可が13か月以下の人は、MPFの加入対象外となります。このため、現地採用と駐在では、社会保険の扱いそのものが異なる場合があります。自分がどちらに当たるかは、雇用契約の段階で確認しておくべき事項です。

    なお、退職金とMPFの積立を相殺できる「対沖」と呼ばれた制度は、2025年5月1日に廃止されています。制度は変更される場合があります。手続きの詳細は各公的機関の公式サイトでご確認ください。

    そして、税とMPFを差し引いて残った手取りに、香港最大の固定費である住居費がかかります。本記事では住居費の金額は書きません。書けるのは構造だけです。香港は限られた土地に人口と資本が集中しており、住宅コストは世界でも最も高い水準にあります。税と社会保険で残った分を住居費が大きく削り取るため、手取りの多さは、そのまま可処分所得の多さを意味しません。実額の相場は、香港の物価についてのページと、次の公的調査で確認してください。

    出典:ジェトロ「アジア大洋州・日本 投資関連コスト比較調査」

    住まいの探し方や、住宅手当を含む福利厚生の実情は、次のページで解説しています。

    香港で住む物件の探し方

    香港の企業の福利厚生

    額面の大きさではなく、税・MPF・住居費を通した後に何が残るか。オファーを比較する基準は、そこに置く必要があります。香港以外も含めて条件の良い求人を広く見たい場合は、次の特集が参考になります。

    アジア各国の高給・好条件の求人特集

    チェックポイントアイコン

    チェックポイント

    オファーを検討する際は、次の4点を確認してください。
    ①自分がMPFの加入対象か、免除対象か
    ②住宅手当の有無と金額
    ③医療保険の適用範囲
    ④初年度の納税タイミングと納付資金の準備

    香港の就労ビザ──雇用先が決まっていなくても申請できる制度がある

    香港の行政窓口で順番を待つ申請者

    香港のビザ制度には、他のアジア主要国と比べて決定的に違う点が2つあります。ひとつは、就労ビザに金額での最低給与基準がないこと。もうひとつは、内定がなくても申請できる制度が用意されていることです。

    「まず内定を取らなければ、何も始まらない」という前提で海外転職を考えている人は少なくありません。しかし香港では、この順序が逆になりえます。先にビザを確保してから現地で仕事を探すという道筋が、制度として存在するからです。

    この章では、雇用を前提とする基本ルートのGEPと、雇用が未定でも申請できるルートに分けて整理します。職務経験とビザ要件の関係は、次のページでも解説しています。

    就業経験2年で香港の就労ビザは取得できるのか

    GEP(一般就業政策)──最低給与額の固定基準を置かない仕組み

    GEP(General Employment Policy/一般就業政策)は、日本人が香港の企業に雇用されて働く場合の基本ルートです。日系企業への駐在も、外資系企業や現地企業への現地採用も、原則としてこのルートで処理されます。

    香港入境事務処が示す主な要件は、次の4点です。

    1. 保安上の問題がなく、重大な犯罪歴がないこと
    2. 良好な学歴を持つこと。通常は関連分野の学士号を指しますが、特別な事情があれば、技術資格や実証された専門能力、関連する経験と実績が書類で裏づけられる場合も認められます
    3. 確定した内定があり、その職務が申請者の学歴または職務経験に関連し、かつ香港の現地労働力では容易に充足できないものであること
    4. 収入・住居・医療その他の待遇を含む報酬パッケージが、香港の同職種の市場水準に概ね見合っていること

    この4点に、金額での最低給与基準は含まれていません。

    出典:香港入境事務処「一般就業政策(GEP)」

    ここが他国との決定的な違いです。インドの就労ビザには年収の下限が、台湾の外国専業人材には月給の下限が、それぞれ金額で定められています。一方、香港のGEPは「市場水準との整合」という相対基準を採ります。固定のボーダーラインが存在しないため、職種によって実質的なハードルの高さが変わります。

    裏返すと、現地でも容易に採用できる職務では通りにくい、ということでもあります。日本語での顧客対応や日本本社との折衝など、香港の労働市場では代替が効きにくい要素を申請書類でどう示すか。ここが実務上の分かれ目になります。

    なお、GEPには技術専才類別(Technical Professionals Stream)という枠もあります。18〜40歳で学位を持たない技術者を対象に、人手不足が深刻な指定職種に限って、配額制で受け入れる仕組みです。学位要件がネックになる技能職の人は、確認する価値があります。

    出典:香港入境事務処「技術専才類別(GEP・TP Stream)」

    制度は変更される場合があります。手続きの詳細および最新の要件は、香港入境事務処の公式サイトでご確認ください。

    ここがポイント
    ポイント

    GEPの審査は、給与の絶対額ではなく「その職務の市場水準に見合っているか」で判断されます。同じ年収でも、職種と職務内容の定義によって通りやすさが変わるということです。応募の段階で、自分の職務内容がどう定義されているかを確認しておきましょう。

    雇用先が未定でも申請できる3つのルート

    香港のカフェでノートパソコンに向かう女性

    ここからが、この記事で最も重要な情報です。香港には、雇用先が決まっていなくても申請できるビザの枠が用意されています。中心となるのは、2022年末に始まった高端人才通行証計画(Top Talent Pass Scheme/TTPS、通称「高才通」)です。高才通は、申請時点で香港での雇用が決まっている必要がありません。申請ルートは、次の3つの区分に分かれます。

    区分 要件 初回滞在期間
    A類 申請前1年の年収がHK$250万以上(課税対象の雇用所得・事業所得。給与、手当、ストックオプション、自己保有会社からの利益を含む。個人投資からの収益は算入されない) 36か月
    B類 指定リストの世界百強大学の学士号を持ち、直近5年で3年以上の職務経験がある 24か月
    C類 直近5年以内に指定リストの世界百強大学の学士号を取得し、職務経験が3年未満。年間定員制で先着順 24か月

    出典:香港入境事務処「高端人才通行証計画(TTPS)」

    B類・C類の対象となる世界百強大学のリストは、入境事務処が毎年更新しており、日本の大学も複数含まれています。ただし、リストの顔ぶれは年度によって入れ替わります。自分の出身校が対象かどうかは必ず公式リストで確認する必要があります。ここは、推測で判断してはいけない部分です。

    審査にかかる期間は、必要書類がそろってから通常4週間程度です。

    出典:香港特別行政区政府「人材受入制度の一覧とビザ申請方法」

    注意すべきは、その先です。延長申請の時点では、香港での雇用または事業の確保が求められます。つまり高才通は、「まず入国して、仕事を探す時間を制度として確保する」ための枠であり、無条件に滞在し続けられるルートではありません。なお、配偶者と18歳未満の未婚の子については、扶養家族としてのビザを同時に申請できます。

    香港の大学に留学した経験がある人には、IANG(非本地卒業生留港/回港就業安排)という別の枠もあります。香港の認定を受けたフルタイム課程で学士以上の学位を取得した非現地卒業生が対象で、こちらも申請時に雇用は不要です。該当する人は、高才通より先にこのルートを検討してください。

    また、香港に連続7年間通常居住すると永住権の申請資格が生じます。高才通で入国してからの滞在期間も、この7年に算入されます。

    制度は変更される場合があります。手続きの詳細および最新の要件は、香港入境事務処の公式サイトでご確認ください。

    渡航後の生活立ち上げに関わる実務は、次のページで解説しています。

    香港での銀行口座の作り方

    注意
    注意

    高才通の対象大学リストは毎年更新されます。日本語で流通している解説記事は、公表当初のリストのままになっていることが多く、そのまま鵜呑みにすると判断を誤ります。応募や申請の前に、必ず入境事務処が公表している最新のリストを確認してください。

    香港が選べなかったときの、現実的な次の一手

    空港の窓から駐機する航空機を眺めるビジネスパーソン

    ここまで、香港の労働市場、税と手取りの構造、ビザ制度を整理してきました。

    ただし、冷静に見ておくべきことがあります。香港は、制度上の入口が開いていても、実際に求人が見つかるかどうかは別問題だということです。特に日本人向けのポジションは、絶対数が限られています。

    そこで最後に、香港で通用する経験のつくり方と、香港が選べなかった場合の中華圏・アジアの選択肢を、同じ物差しで並べて確認します。

    英語と広東語──「中国語ができる」だけでは足りない

    香港で働くうえで、言語の実情は正確に知っておく必要があります。まず、香港のビジネス共通語は英語、日常言語は広東語です。多国籍企業や金融、法務・会計などの専門サービスでは、英語だけで業務が回る職場が多くあります。

    一方で、オフィスの雑談、現場のやりとり、取引先との非公式な会話は、広東語で行われることが少なくありません。北京語(普通話)も通じますが、生活と職場の日常を支えている言語は広東語です。したがって、「中国語ができる=香港で通用する」という理解は正確ではありません。中国本土向けのビジネス経験が、そのまま香港で評価されるとも限りません。

    では、日本人には何が求められるのか。多くの場合、「英語での実務遂行能力」と「日本本社・日系顧客との折衝」の組み合わせです。注意したいのは、後者だけでは弱いということです。日本語ができることだけでは差別化になりません。貿易実務、経理、物流管理、営業といった実務スキルと組み合わさって、初めて価値になります。

    前の章で見たGEPの要件を思い出してください。ビザが下りるのは、その職務が「香港の現地労働力では容易に充足できないもの」である場合でした。英語で実務を遂行でき、かつ日本との橋渡しができる。この組み合わせこそが、香港でビザが下りる根拠になります。

    英語力を軸に求人を探す場合は、次の特集が参考になります。

    英語力を活かせる海外求人特集

    香港・シンガポール・台湾を同じ物差しで並べる

    香港のオフィスで打ち合わせをする多国籍のチーム

    香港を検討する人が同時に比較することの多いシンガポールと台湾を、この記事で使ってきた物差し(邦人数の動き・ビザの入口・給与の見方)で並べます。優劣の話ではなく、性格の違いの話です。

    まず、人の動きです。外務省の調査によると、2025年10月1日時点の在留邦人数は、シンガポールが33,397人(前年比2.6%増、都市別4位)、香港が23,228人(1.5%増、10位)、台湾が21,755人(うち台北9,693人)です。3拠点とも増加傾向にあります。日本人が働く場所として、いずれも人が集まり続けている拠点です。

    次に、ビザの入口です。香港には高才通、台湾には就業ゴールドカードという、雇用主のスポンサーを必要としない制度があります。この点で両者は同型であり、内定を取ってから動くか、先に在留資格を得てから探すかを選べます。一方、雇用を前提とする通常ルートの設計は対照的です。台湾の外国専業人材には月給47,971NTD以上という金額の下限が定められているのに対し、香港のGEPは「市場水準との整合」という相対基準を採ります。

    仕事の性格も異なります。香港は、地域統括・金融・貿易物流といった「調整とハブ」の仕事が中心です。台湾は、半導体・電子部品・ICTのサプライチェーンに紐づく仕事の比重が高く、日系顧客への営業や、品質・工程をめぐる日台間のコミュニケーションが典型的な役割になります。同じ「中華圏」でも、求められる経験がまったく違います

    台湾の求人を見る

    最後に、生活コストです。香港は住宅コストが世界最高水準にあり、税負担の軽さを住居費が相殺する構造であることは、前の章で述べたとおりです。台湾は、台北であっても住居費は香港より大幅に低い水準にあります。額面の比較ではなく、住居費まで含めた実質で見る必要があります

    香港の生活水準は日本と比べてどの程度か

    出典:ジェトロ「香港・日本からの進出に関する制度」

    チェックポイントアイコン

    チェックポイント

    ①在留邦人数は3拠点とも増加傾向にある
    ②香港はハブ機能、台湾はサプライチェーンが仕事の中心
    ③ビザの入口は、スポンサー不要ルートが香港・台湾の両方にある
    ④額面ではなく、住居費込みの実質で比較する

    いま動ける選択肢から確認する

    最後に、あらためてお伝えします。ABROADERS CAREER では現在、香港国内の求人はお取り扱いがありません。

    そのうえで、この記事の読者がいま実際に応募できる選択肢を挙げておきます。中華圏で当社が求人を扱っているのは台湾です。前の節で見たとおり、台湾は香港と性格の異なる市場ですが、スポンサー不要のビザルートがあり、在留邦人が増えているという点では共通しています。

    台北の求人を見る

    台湾の営業・セールスエンジニアの求人を見る

    また、勤務地ではなく、「英語を使って働く」「外資系の環境で働く」という条件の軸から探す方法もあります。香港で評価される英語実務の経験は、アジアの他都市でも同じように評価されるからです。

    香港については、制度改正の頻度が高く、日本語で流通している記事には古いものが多いのが実情です。本記事で挙げた統計や制度も、時間の経過とともに更新されていきます。入境事務処や税務局など公的機関の一次情報にあたることと、いま動ける選択肢を並行して見ておくこと。この2つを両輪にして、判断を進めてください。

    台湾側の市場については、次の記事で詳しく解説しています。

    台湾の営業・セールスエンジニア求人|平均年収と半導体業界の採用動向

    台湾で会計・経理職に転職する|台中の求人事情と成功のコツ

    香港の転職に関する記事の一覧を見る

    オフィスを出て歩く日本人社員と現地スタッフ
    コメントアイコン

    筆者からのコメント

    香港は制度の更新が速く、日本語で読める情報は2020〜2022年時点のものが少なくありません。判断の土台は、入境事務処や税務局など公的サイトの一次情報に置いてください。あわせて、いま応募できる選択肢を並行して見ておくと、香港の状況を見極める間もキャリアを止めずに済みます。

    本記事は2026年8月時点の公開情報にもとづいて作成しています。香港の就労ビザ制度、税制、強制性公積金(MPF)の拠出上下限はいずれも変更される可能性があります。手続きの詳細および最新の要件は、香港入境事務処・香港政府(GovHK)・積金局の各公式サイトでご確認ください。

    お問い合わせ

    海外で働きたい方、まずは気軽にお問い合わせください!