タイの物流業界の求人を見ていると、想像とのずれが2つ出てきます。ひとつは、現場で荷物を動かす仕事がほとんど出てこないこと。もうひとつは、語学の要求がかなり高いことです。
掲載されている12件を読むと、募集されているのは荷物を集めてくる営業と、倉庫や国際輸送を回す管理職が中心でした。そして英語について、指定なしという求人が1件もありません。
ここから先は、求人票に書かれていることだけを根拠に、この12件の中身を見ていきます。
12件のうち8件がバンコク|物流はオフィスの仕事という前提

勤務地はバンコクが8件で、残り4件がラヨーン、サムットプラーカーン、チョンブリー、そしてチェンマイです。
物流というと工業団地の倉庫を思い浮かべますが、この12件に限れば拠点はバンコクに集まっています。国際輸送やフォワーダー業務は荷主との折衝と社内外の調整が仕事の中心になるため、現場よりオフィスに近い勤務地になっているようです。
地方の4件も、倉庫の現場作業ではありません。ラヨーンとチェンマイ支店(勤務地の表記はランプーン)は営業、サムットプラーカーンは営業兼コーディネーター、チョンブリーは搬送機器メーカーの財務・会計です。
営業が6件で最多|運ぶ人ではなく、荷物を集める人

職種名を並べると、営業系が7件で最も多くなります。単に「営業」とあるものが3件、これに営業兼コーディネーター、営業アシスタントマネジャー、カスタマーサポート・営業、ビジネス開発マネージャーが1件ずつ加わります。
残る5件は倉庫管理が2件、国際物流マネージャー、航空輸送カスタマーサービス、財務・会計が1件ずつです。倉庫管理の2件も現場作業ではなく管理職で、片方は「3年以上の管理者としての経験がある方(倉庫管理の経験が望ましいですが、工場での管理経験がある方でも歓迎です)」と、工場の管理経験でも応募できる書き方になっています。
つまりこのカテゴリは、物を運ぶ人ではなく、運ぶ仕事を取ってくる人と、回す人を探しています。
倉庫管理の2件も対照的です。片方は必須条件が「大学卒業資格」「倉庫管理の経験5年以上」「日常会話レベルの英語力」「運転免許」と倉庫管理の経験に限定しているのに対し、もう片方は3年以上の管理者経験があれば工場でも可としています。同じ職種名でも入口の広さが違うので、必須条件の文面まで読んでおきたいところです。
語学の要求が高い|英語の指定なしが1件もない

求人詳細の英語欄を集計すると、日常会話レベルが9件、ビジネスレベルが3件。指定なしや初級はゼロでした。
必須条件の書き方も具体的です。外資大手物流企業のビジネス開発マネージャーは「英語ビジネスレベル以上(社内公用語英語)」、日系大手物流会社の国際物流マネージャーは「英語基礎会話以上(社内外との英語コミュニケーション有)」と、使う場面まで書いています。倉庫管理の求人でさえ「英語日常会話レベル(社内コミュニケーションに使用するため)」です。
英文レジュメの提出を必須にしている求人も2件あります。国際輸送を扱う以上、社内も社外も英語で回る。それがこのカテゴリの前提になっています。
TOEICの点数で手当が出る会社が3件|最高8,000バーツ/月

語学が効くカテゴリであることは、福利厚生欄にも出ています。
日系大手物流会社の2つのポジションには、どちらも「語学手当(TOEICの点数により最大4,000THB / 月)」という項目があります。さらに手厚いのがラヨーンの営業で、「言語手当:有 (スコアが上がれば都度更新)」としたうえで「Toeic 900点以上:8,000バーツ」「800点以上:5,000バーツ」「600点以上:3,000バーツ」と3段階の金額を明示しています。
タイの求人で語学手当そのものは珍しくありませんが、TOEICの点数と金額を直接ひもづけているのは12件のうち3件。入社後も語学が評価対象として残り、点数を上げれば支給額も上がる設計になっています。
1件だけ雇用契約ではない|業務委託・フルリモートという例外

12件のなかに、性格がまったく違う求人が1件あります。
日系物流会社の航空輸送カスタマーサービスで、求人タイトルの冒頭に「【業務委託契約】」と入っており、フルリモートです。注目すべきは必須条件で、「合法で現地に居住できるビザを保有されている方」「個人事業主として自身で居住国で適切な収入に対する税務申告ができる方」と書かれています。
つまり、会社はビザも就労許可も出しません。すでに何らかの形でタイに住める状態にある人が、個人事業主として業務を受託する形です。給与も51,600〜68,900バーツと12件で最も低く、勤務も「週末、祝日を含む週5日間(シフト制)」。
タイで働き始めるための一歩としては使えない求人ですが、すでに現地にいて働き方を変えたい人には選択肢になります。求人一覧で並んで見えても、前提がまったく違うので分けて考えてください。
試用期間中だけ毎週土曜出社|休日が途中で変わる求人

休日欄で気をつけたいのが、期間によって条件が変わる求人です。
日系大手物流会社の2件は、休日欄が「<試用期間中> ・日曜日、祝日(タイのカレンダー通り)」から始まり、「※土曜日は試用期間中のみ毎週出社」と続きます。ただし試用期間が明けても土曜が全休になるわけではなく、<試用期間後>は「土曜日(月1回出社 / 8:30-12:00)」と書かれています。毎週から月1回に減る、という読み方が正確です。
ほかにも、営業兼コーディネーターは必須条件に「土曜日勤務可能な方(土曜日は最低月2回出勤あり)」を入れており、倉庫管理の1件は「隔週で土曜日出勤、月2回土曜日あり」。ラヨーンの営業は「土曜日は隔週勤務あり」です。土日祝で完全に固定されているのは、12件のうち半分ほどでした。
「ゴルフなどの接待が可能な方」|必須条件に書かれていること

求人票の必須条件には、スキル以外のことが書かれていることがあります。
ラヨーンの日系物流企業の営業は、必須要件に「大学卒業以上」「営業経験があるかた」「英語またはタイ語が日常会話レベル」と並べたうえで、4つめに「ゴルフなどの接待が可能な方」を入れています。
地方拠点の営業で、顧客との関係づくりが仕事の一部になっていることが読み取れます。好き嫌いが分かれる条件ですが、入社してから知るより、応募前に見えているほうが判断しやすいはずです。
もうひとつ、福利厚生欄で目に留まる記載があります。バンコクの倉庫管理(幹部候補)は「<定年> 55歳(定年後は契約延長あり)」と定年まで書いています。タイの求人票に定年が明記されることは多くありませんが、長く働くつもりで応募するなら確認しておきたい項目です。
10件に社用車か住宅手当|ドライバー付きという選択肢

12件のうち10件に、通勤や住まいに関する記載があります。
目立つのがドライバー付きの社用車です。ラヨーンの営業は「社用車支給(ドライバー付きだが、他の現地採用者と相乗り)」、外資大手物流企業は「営業時(ドライバー付社用車貸与/または自走社用車貸与)」、バンコクの営業も「ドライバー付き社用車あり(営業時、遠方や状況により利用可)」。運転できなくても営業ができる設計になっています。
住宅面では、日系大手物流会社の2件が「住宅手当 (10,000THB / 月)」、ラヨーンの営業が「家賃手当: 有 (10,000バーツ/月 前後 要相談)」。また「Cost of Living: 1,500バーツ/月」という項目が2件にあり、チェンマイ支店の営業とバンコクの営業アシスタントマネジャーの両方に付いています。
記載がないのは業務委託の1件だけです。もっとも厚みには差があり、チョンブリーの財務・会計は「社用車応相談」の一行にとどまります。額面の給与が近い求人を比べるときは、この欄を並べて見ておくと判断がつきます。
地方の4件|チェンマイ、ラヨーン、チョンブリー、サムットプラーカーン

バンコク以外の4件は、それぞれ性格が違います。
チェンマイ支店の営業は、必須条件が「語学:英語日常会話レベル」と「自動車運転免許があり運転可能な方」の2つだけ。歓迎条件に「陸運業での経験もしくは物流業界での経験がある方」が入っており、業界未経験でも応募できる書き方です。求人票の勤務地欄はランプーンで、いずれにせよタイ北部。バンコクとは生活環境が大きく変わります。
ラヨーンは先ほどの接待条件つきの営業。サムットプラーカーンの営業兼コーディネーターは「物流、倉庫業界での経験がある方」が必須で、給与も70,000〜120,000バーツと地方勢では高めです。
チョンブリーの1件は少し毛色が違い、日系搬送機器メーカーの財務・会計です。物流業界のタグは付いていますが、業務は「IFRSに関する実務経験」を必須とする経理職で、物流の実務経験は求められていません。
運転免許の扱いも職種で分かれます。必須にしているのは3件で、チェンマイ支店の営業と、倉庫管理の2件です。ドライバー付き社用車が用意されるバンコクの営業職では、免許は歓迎条件にとどまります。
月給5.2万〜14万バーツ|経験年数との関係

12件の給与レンジは、下限が51,600バーツ、上限が140,000バーツです。
上限140,000バーツは2件で、チョンブリーの財務・会計(100,000〜140,000バーツ)と、外資大手物流企業のビジネス開発マネージャー(80,000〜140,000バーツ)。前者はIFRS、後者は「4年以上の物流業界での営業経験」と「英語ビジネスレベル以上」を必須にしています。
必須条件の経験年数は2年から5年に集まっています。「実務経験(2年以上)」「目安として2年以上」が2件、3年以上が2件、4年以上が1件、5年以上が2件。年数の幅は狭く、そのぶんレンジも60,000〜100,000バーツあたりに固まっています。
下限51,600バーツは業務委託の1件だけで、これは雇用契約ではないため単純に比較できません。実質的な下限は60,000バーツと見ておくのが近いはずです。
ビザ・就労許可と、応募前に整理しておきたいこと

タイで働くにはノンイミグラントBビザと就労許可(ワークパーミット)が必要です。このカテゴリでは、12件のうち11件は企業側が手続きを担う前提で、福利厚生欄にも「ビザ、労働許可証支給」あるいは「ビザ、労働許可証サポート」と書かれています。
例外が業務委託の1件で、こちらは応募者側がすでにビザを持っていることが必須条件です。物流業界の求人を見るときは、まずここを確認してください。
そのうえで整理しておきたいのは次の4点です。第一に、語学。英語の指定なしがゼロで、ビジネスレベルを求める求人も3件あります。TOEICの点数で手当が変わる会社が3件あることも合わせて見ておきたいところです。第二に、職種。募集の中心は営業と管理職で、現場作業の求人ではありません。第三に、休日。試用期間中だけ毎週土曜出社という求人や、隔週・月2回の土曜出勤がある求人が複数あります。第四に、額面以外の条件。社用車、ドライバー、住宅手当、語学手当の有無で実質の待遇が変わります。
この4点を先に決めてから求人を見ると、12件のうち自分が実際に応募できるものが数件に絞れます。条件面の詳細や、いま公開されていない求人については、海外就職に詳しいキャリアアドバイザーに相談すると早く整理できます。

