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タイの現地採用と駐在員はどう違うのか|求人データで見た待遇差と、切替のリアル

目次

    タイで働く日本人の話になると、必ず「現地採用か、駐在員か」という対立軸が出てきます。駐在員は給料も待遇もいい、現地採用はその下、という前提で語られがちです。

    ただ、この比較はふつう体験談ベースで語られていて、数字で確かめられることはあまりありません。ここでは、いまタイで公開されている日本人向け求人を実際に集計して、この二つがどう違うのかを見ていきます。求人票に書かれていることだけを根拠にします。

    「駐在員切替あり」のタグが付くのは8件|まず数を押さえる

    タイの求人検索には「駐在員切替あり」という絞り込み条件があります。現地採用として入社したあと、日本本社の社員に切り替わる可能性がある求人につくタグです。

    これで絞ると、該当するのは8件でした。掲載されているタイ求人はおよそ220件なので、全体の4%ほどです。
    ただし、このタグが付いていない求人にも駐在の話は出てきます。求人タイトルに「駐在切り替えの可能性あり」「駐在員採用の可能性あり!」「駐在員雇用あり」「駐在員雇用の検討可能!」と書いているものが、タグとは別に7件以上ありました。本文のなかで「過去には現地採用から本社採用への切り替え事例もあり」「パフォーマンスにより日本採用切り替えの検討可能!」と触れている求人もあります。タグだけで探すと取りこぼすので、フリーワードやタイトルも合わせて見たほうが確実です。

    ここで押さえておきたいのは、タイの求人サイトに掲載されるのはタイ法人が募集するポジション、つまり現地採用が前提だということです。「駐在員になりたい」と思って求人を探しても、実際に応募できる入口は現地採用になります。切替はそのあとの話です。

    現地採用社員活躍中は54件|4件に1件はこのタグが付く

    反対側のタグも見てみます。「現地採用社員活躍中」で絞ると54件。掲載中のおよそ220件に対して4分の1弱がこのタグを持っています。

    このタグが意味するのは、その会社にすでに現地採用の日本人が複数いて、働く形として定着しているということです。日本人が自分ひとりという環境を避けたい場合、この条件で絞ると探しやすくなります。

    もうひとつ、このタグを見るときの注意点があります。「現地採用社員活躍中」が付いていない求人が現地採用でない、という意味ではありません。あくまで会社が自己申告で設定している特徴タグなので、付いていなくても現地採用の求人は大量にあります。日本人が複数いる環境かどうかを見る目安、くらいに考えておくのが実態に近いはずです。

    給与を並べると上限中央値で3.5万バーツの差

    では待遇はどれくらい違うのか。掲載中のタイ求人(およそ220件)の給与レンジを全件集計して、中央値を出しました。

    掲載中のタイ求人全体では、下限の中央値が70,000バーツ、上限の中央値が100,000バーツです。「現地採用社員活躍中」の54件も、まったく同じ70,000バーツと100,000バーツでした。つまり現地採用中心の求人は、相場そのものです。

    これに対して「駐在員切替あり」の8件は、下限の中央値が85,000バーツ、上限の中央値が135,000バーツ。上限で比べると35,000バーツ、率にして35%高く出ます。

    ただし、この差を「駐在だから高い」と読むのは順番が逆です。次に見るように、切替タグが付く求人はそもそもポジションが違います。

    切替あり8件の顔ぶれ|工場長・部門長・GMに集中している

    8件の職種を並べると、傾向がはっきりします。工場長または副工場長候補、品質部門長、金型部門長、製造GM、エンジニアマネージャー、金型アドバイザー、SAPコンサルタント、そして営業が1件。

    8件のうち5件が、工場や部門を任される管理職です。もう1件の金型アドバイザーは「射出成形用金型に関する技術的アドバイスおよび管理」「スタッフへの技術指導・育成」を担う技術指導職で、部門を丸ごと預かる立場とは少し違います。いずれにしても給与が高いのは駐在に切り替わるからではなく、任される範囲が広いからだと読むほうが自然です。

    金額の幅も大きく、上限が最も高いのはITコンサルティング企業のSAPコンサルタントで120,000〜300,000バーツ。この300,000バーツはタイ求人全体の最高額と並びます(同額の求人がもう1件あり、そちらは下限200,000バーツとさらに高い水準です)。次いでダイカストメーカーの工場長候補が170,000〜280,000バーツで、下限170,000バーツはこの8件のなかでは最高です。逆にいちばん低いのは日系金型メーカーの営業で50,000〜70,000バーツ。切替タグが付いていても、相場を下回る求人もあります。

    勤務地はチョンブリーが4件、パトゥムターニーが3件、バンコクがSAPコンサルタントの1件です。パトゥムターニーはバンコク首都圏に含まれる県なので、首都圏内が4件、首都圏の外に出るのがチョンブリーの4件と、ちょうど半々になります。工場を任せる話なので郊外が中心ですが、地方に出るしかないというほどではありません。

    「本社採用切り替え実績あり」と書く会社|同じメーカーから3件

    8件のうち3件は、同じダイカストメーカーの求人です。工場長 or 副工場長候補、品質部門長、金型部門長の3ポジションで、いずれも求人タイトルに「高待遇、本社採用切り替え実績あり」と入っています。

    注目したいのは「実績あり」という書き方です。可能性ではなく、過去に実際に切り替わった人がいるという意味になります。同じ会社が3ポジションでこれを掲げているので、制度として運用されていると読めます。

    残りの5件のうち、タイトルで駐在に触れているのは2件だけです。日系プラスチック部品メーカーが「駐在雇用の可能性あり」、日系鍛造品メーカーが「駐在切り替えあり」。あとの3件はタイトルに駐在の記載がなく、タグだけが付いています。可能性としか書かれていない場合、条件も時期も求人票からはわかりません。気になるなら、どういう実績で切り替わったのか、直近で事例があるのかを面接で聞いておくのが確実です。

    切り替わると何が変わるか|3か国異動という一文

    待遇が上がる話ばかりが目立ちますが、求人票には代償も書かれています。

    先ほどのダイカストメーカーの工場長候補には、応募資格の【その他】欄にこう書かれています。「本社採用社員となった際に日本、タイ、インドの3か国で異動が発生することがございます。」

    この求人でいえば、本社採用になった時点で異動の対象に入る、と書かれています。タイに腰を据えたくて現地採用を選んだ人にとっては、切替がむしろ望まない転勤につながる可能性がある、ということです。

    この一文は、現地採用と駐在員の違いが給与だけではないことをよく表しています。動かないでいられるか、会社の都合で動くことになるか。ここは金額とは別に考えておく必要があります。

    求人票に出てくる駐在寄りの手当|住宅手当・一時帰国費用・専属ドライバー

    待遇面では、福利厚生欄に駐在らしい項目が出てくる求人があります。

    ダイカストメーカーは工場長候補も品質部門長も同じ内容で、「住宅手当(応相談)」と「通勤補助(社用車貸与もしくは乗合 / 役職により異なります。)」。いちばん手厚いのが日系鍛造品メーカーの製造GMで、「住居支給(予算上限:単身30,000THB/ご家族帯同40,000THB)」「お子様の学費補助」「一時帰国費用補助」が並びます。通勤についても「シラチャにお住まいになる場合は乗合で通勤可能 / 自家用車で通勤される方にはガソリン代支給」、さらに「試用期間通過後、専属ドライバーによる通勤に関しては応相談」と書かれています。

    住居支給に上限額まで示し、子どもの学費まで見るという条件は、駐在員の待遇に近い形です。切替を前提にしているかどうかにかかわらず、こうした手当が付くかどうかで実質の条件はかなり変わります。額面のバーツだけで比べないほうがいい理由がここにあります。

    もっとも、8件すべてに住居の手当が付くわけではありません。SAPコンサルタントの福利厚生欄には住宅手当も一時帰国費用も記載がなく、住居や移動に関わるのは「通勤手当(実費精算)」だけです。一方で、8件でいちばん給与が低い日系金型メーカーの営業には住宅手当が付いています。タグが付いているかどうかと、手当の厚さは別物として見る必要があります。

    タイの求人票は福利厚生欄がかなり詳しく書かれているほうですが、載っていない項目が必ずないとは限りません。住居や帰国費用の扱いは条件面に直接効いてくるので、記載がなければ面接の場で確認しておくのが確実です。

    現地採用のほうが入りやすい|必須条件の重さの違い

    切替あり8件の必須条件を読むと、要求はやはり重めです。

    ダイカストメーカーの工場長候補は「自動車(部品)業界での経験10年以上または工場運営管理経験」。SAPコンサルタントは「5年以上のSAPコンサルタント経験者」で、しかもその理由を「(ビザの取得要件)」と明記しています。日系鍛造品メーカーの製造GMは「製造工程の管理経験」です。

    語学の要求は、意外にも高くありません。8件のうち英語ビジネスレベルを求めるのはSAPコンサルタント1件だけで、残りは日常会話レベルか、それ以下です。工場長候補は「英語日常会話レベル(簡単なコミュニケーションが取れるレベル)」とわざわざ補足しています。

    つまり、切替を狙える求人の入口を狭めているのは語学ではなく、業界経験の年数と、任される範囲です。10年やってきた領域があるかどうかで、見える求人がまったく変わります。

    なお、8件のうちSAPコンサルタントだけは、必須条件の年数にその理由を書いています。「5年以上のSAPコンサルタント経験者(ビザの取得要件)」という書き方です。年数の指定を見たときは、それが業務上の必要なのか制度側の要件なのかで、相談できる余地が変わります。ここまで明記している求人は多くないので、気になる場合は確認しておくとよい点です。

    ビザは同じ|どちらでも就労許可は会社が取る

    制度面で誤解されやすい点をひとつ。ビザと就労許可については、現地採用でも駐在員でも扱いは変わりません。

    どちらもノンイミグラントBビザと就労許可(ワークパーミット)が必要で、手続きは雇用する会社が行います。切替あり8件はすべて、福利厚生欄に「ビザ、労働許可証支給」と記載がありました。現地採用だからビザが不利になる、ということはありません。

    違うのは雇用契約の主体です。現地採用はタイ法人との契約、本社採用に切り替われば日本本社との契約になります。給与の支払い通貨、社会保険、退職金の扱いがここで変わってくるので、切替の話が出たときに確認すべきはこの部分です。

    どちらを選ぶかではなく、どこから入るか

    ここまでを整理します。

    第一に、駐在員として直接応募できる求人はほとんどありません。求人サイトに出ている仕事の入口は、基本的に現地採用です。

    第二に、切替タグが付く求人は8件で、その多くは工場や部門を任される管理職です。給与の中央値は全体より上限で35,000バーツ高いものの、それは切替のためではなく、ポジションが重いからです。タグの付いていない求人でも、タイトルや本文で切替に触れているものが十数件あります。

    第三に、切替には代償もあります。本社採用になれば異動の対象になり、タイに留まる保証はなくなります。

    第四に、住宅手当や一時帰国費用といった項目は、切替の有無とは別に求人ごとに違います。額面の給与だけで比べると実態を見誤ります。

    現地採用と駐在員を「どちらが得か」で比べるより、いまの自分の経験でどの求人に届くかを見たほうが、話が早く進みます。駐在員切替ありの求人現地採用社員活躍中の求人は条件で絞り込めるので、まずは実際の募集内容を見てみてください。条件面の詳細や、いま公開されていない求人については、海外就職に詳しいキャリアアドバイザーに相談すると整理が早く進みます。

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    ※ 求人データは本サイトに掲載中のタイ求人をもとに集計したものです。

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