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タイの就労ビザが下りる条件|求人217件の下限が5万バーツを切らない理由

目次

    タイで働きたいと思って求人を見ていくと、ある共通点に気づきます。月給の下限が、どれも5万バーツあたりから始まっている。職種も業界も違うのに、この線だけが揃っている。

    これは偶然ではありません。タイの就労ビザと労働許可には、企業側にも本人側にも具体的な条件がかかっていて、その一つが給与水準です。この記事では、実際の求人217件の数字と、ビザ申請実務の基準を突き合わせて、「何があればタイで働けるのか」を整理します。

    求人217件のうち215件が月給5万バーツ以上|下限の分布

    まず数えてみます。2026年9月時点でABROADERS CAREERに掲載されているタイの求人217件について、月給レンジの下限を集計しました。

    下限が5万バーツ未満の求人は、217件のうちわずか2件です。残る215件、全体の99%が5万バーツ以上から始まっています。

    分布を1万バーツ刻みで見ると、5万バーツ台が41件、6万バーツ台が43件、7万バーツ台が51件、8万バーツ台が40件。この4つの帯で175件、全体の8割を占めます。9万バーツ台が4件と急に少なくなり、10万バーツ台が25件、それ以上が11件です。

    7万バーツ台がもっとも多く、5万バーツを下回るものがほぼ存在しない。さらに細かく見ると、下限がちょうど50,000バーツという求人が36件あり、全体の17%を占めます。そして45,001バーツから49,999バーツの帯は1件もありません。

    きりのいい数字への集中と、そのすぐ下の空白。この形は、市場が自然につけた値段では生じにくいものです。どこかに線が引かれていると考えたほうが自然です。

    ビザの更新要件に「月額5万バーツ以上」がある

    その下限がどこから来ているのか。ビザ申請の実務を扱う事務所の解説を読むと、答えが書かれています。

    外国人の給与額そのものには最低額の規定がありません。ただし、就労ビザ(ノンイミグラントB)の期限を延長する際に、月額5万バーツ以上の給与所得が要求されます。この金額は国籍によって異なります。

    ここで効いてくるのが手続きの順番です。日本で取得するノンイミグラントBビザで認められる最初の滞在期間は、最長でも90日です。入国後に労働許可証を取り、その90日が切れる前に入国管理局で1年間の延長を申請する。この最初の延長申請の時点で、所得の水準が見られます。

    つまり、仮に5万バーツを下回る条件で入国できたとしても、3か月後の延長申請で行き詰まる可能性がある。企業側もそれを分かっているので、最初から延長に耐える金額で募集をかけます。これが求人の下限を5万バーツに揃えている一因だと考えられます。

    ただし、これが唯一の理由だと断定はできません。この217件はいずれも日本人向けの、企業がビザをサポートする前提の求人です。そもそも専門職や管理職に偏った構成でもあるので、職種の中身だけでも5万バーツ前後の水準は説明がつきます。所得要件が下支えしている、という程度に受け取るのが正確だと思います。

    逆に言えば、「タイは物価が安いから月給3万バーツでも暮らせる」という話は、日本人の就労ビザという文脈では成立しません。生活費として足りるかどうかと、ビザが下りるかどうかは別の問題です。

    5万バーツを下回る2件は何なのか

    自分で立てた説明の反証になるので、例外の2件も見ておきます。

    1件はバンコクの日本語教師の求人で、月給45,000〜50,000バーツ。下限は5万を割っていますが、レンジの上限がちょうど50,000バーツに届いています。提示額を50,000に設定すれば要件を満たせる設計で、これはむしろ50,000という線の存在を裏づける例です。

    もう1件はバンコクのコールセンターのオペレーター職で、月給34,500バーツの固定。こちらは先ほどの説明では処理できません。考えられるのは、所得の要件が国籍によって異なること、あるいは配偶者ビザなど就労先に紐づかない在留資格をすでに持っている人を想定していることです。求人票からは判断できないので、応募を考えるなら選考の早い段階でビザの扱いを確認したほうがいい求人だと思います。

    データが完全に揃っているわけではない、ということは押さえたうえで先に進みます。

    就労ビザと労働許可証は別物|どちらが欠けても働けない

    ここで用語を整理しておきます。混同されがちですが、必要な許可は2つあります。

    ひとつは就労ビザ(ノンイミグラントB)。これは日本にあるタイ王国大使館・領事館などの在外公館が発給する入国のための許可です。もうひとつが労働許可証(ワークパーミット)で、こちらはタイの労働省が発給する、働くための許可です。

    入国管理局と労働省が、それぞれの基準で別々に審査します。滞在許可がないとタイに留まれず、労働許可がないと働けない。両方の期間が重なっている間だけ就労できる、という関係です。

    なお厳密には、ビザ(査証)と滞在許可も別のものです。ビザは在外公館が発給する入国のための許可で、パスポートに貼られるシール。滞在許可はタイの入国管理局が入国時に押す期限つきのスタンプです。「ビザを1年に延長する」と言われるとき、実際に延長されているのは後者の滞在許可のほうです。

    取得の順番は、まず日本でビザを取り、タイに入国してから労働許可証を申請する流れになります。入国後に健康診断書などを揃えて管轄の労働省雇用局に申請し、地域にもよりますが3〜5営業日ほどで発給されます。

    ビザを申請する段階で、大使館から「仮の就労許可証」にあたる書面を求められることがあります。WP3(トートー3、新名称BT32)と呼ばれるもので、これはタイ法人側が労働省雇用局に申請して取得します。この場合、会社がWP3を取る(3〜5営業日)→申請者に送る→日本でビザを取る→入国後に追加書類を出して労働許可証が出る、という順番になります。

    いずれにせよ、手続きそのものは会社が動かないと始まりません。ただし、次に見ていくように、応募の段階で効いてくる条件は別にあります。

    「就労」の定義が広い|無報酬でも1日でも許可が要る

    もう一点、知っておいたほうがいいことがあります。タイの法律でいう「就労」の定義はかなり広く取られています。

    肉体的または知的な労働を行うこと、と定義されていて、報酬の有無や期間の長短は関係ありません。1日だけタイで働く場合も、無報酬のボランティアやインターンであっても、原則として労働許可が必要です。

    「短期間だから」「お金をもらっていないから」という理由では免除されません。観光で入国して現地で少し手伝う、といった軽い気持ちの行動が問題になり得るということです。

    会社側にかかる条件|資本金200万バーツとタイ人4名

    労働許可が下りるかどうかは、本人の資質だけで決まりません。まず雇う側の会社が条件を満たしている必要があります。

    資本金については、外国人1人あたり200万バーツの払込済み資本金が求められます。タイ人配偶者のビザを持っている場合は100万バーツでよいとされています。

    タイ人の雇用については、具体的な人数の規定そのものはありませんが、就労ビザの期限を延長する際に外国人1名あたりタイ人社員4名の雇用が要求されるため、実質的に4名が基本になります。

    さらに、1社が申請できる外国人の人数は原則10名までです。法人税の納付実績が300万バーツ以上ある、タイ人社員を100名以上雇用しているといった条件を満たす企業は、10名を超えて申請できます。

    これが意味するのは、応募先が小規模な会社や設立間もない会社の場合、本人がどれだけ優秀でも枠がなくて採用が動かないことがある、ということです。求人が出ている以上は枠があると考えるのが普通ですが、選考が長引いているときは、この辺りの事情が背景にある可能性もあります。

    本人にかかる条件|年齢20歳以上、職歴2年が目安

    本人側の条件を見ていきます。

    年齢は原則20歳以上。ビザの種類は、就労が可能なタイプのノンイミグラントビザであることが求められます。

    職歴は原則2年以上が目安とされています。職歴のない大学新卒者でも就労は可能ですが、就ける職種は限定されます。

    もう少し踏み込んだ見方として、専門性を証明するために「大学で専攻した学科に関連する職種で2年以上(管理職の場合5年以上)就労経験がある」ことが求められる、という整理もあります。学部と職種が噛み合っていれば2年、管理職として申請するなら5年、という考え方です。

    この基準は法律に一律で書かれているものではなく、労働省の審査運用と各地域の雇用局の細則、それに慣例的なルールが混ざったものです。職種や会社の状況によって実際の可否は変わります。ただ、応募の段階で自分がどのあたりに立っているかを把握しておく意味はあります。

    「ビザの取得要件」と求人票に書いている会社がある

    この話は求職者には見えにくいところで進むのが普通ですが、求人票に直接書いている会社もあります。

    日系大手エアコンメーカーのタイ法人が出している組み込みソフトウェアエンジニア職は、必須条件の1行目がこうなっています。「・ビザ、労働許可証の取得条件を満たす方(下記1もしくは2の該当者)」。その下に「- 1. 関連学部卒かつ関連職種経験が2年以上ある方」「- 2. 関連職種経験が5年以上ある方」と続きます。

    学部と経験年数を組み合わせた二択になっていて、学歴が噛み合わないぶんを年数で補うという構造です。これは先ほど紹介した「学科に関連する職種で2年以上(管理職なら5年以上)」という整理とは切り口が違いますが、どちらも学歴と職歴の両方が見られるという点では共通しています。実際の運用は会社や職種によって幅があるということでもあります。

    もう1件、バンコクのITコンサルティング会社のSAPコンサルタント職は、必須条件に「・5年以上のSAPコンサルタント経験者(ビザの取得要件)」と書いています。5年という数字が会社の希望ではなくビザの都合だと、括弧書きで明かしています。

    この2件は例外的に親切な書き方です。書かれていない求人でも同じ制約はかかっているので、自分の卒業学部と職種の経験年数は正確に言えるようにしておいてください。

    学歴に明示的な基準はない|ただし英文卒業証明書は必ず要る

    学歴について、「大卒以上」といった明示的な条件は設けられていません。職歴を含めた総合的な判断とされています。

    ただし、申請書類として英文の卒業証明書が必要になります。これは学歴審査のためのもので、提出できないと手続きが進みません。

    英文卒業証明書は卒業した学校に申請して取得します。早いところは即日、遅いところは郵送で2週間ほどかかるので、タイで働くことを考えているなら早めに取り寄せておくことをおすすめします。原本を求められることはほとんどありませんが、コピーにそのままサインするのではなく、申請者がパスポートと同じサインをしたうえで、就職先の会社のサイン権者のサインと社印が必要になります。原本は大切に保管し、万が一に備えて2通取っておくと安心です。学校が閉校している場合は、都道府県の教育委員会や文部科学省に問い合わせることになります。

    あわせて、過去の雇用証明も必要書類に含まれます。前職の在籍証明を英文で出してもらう必要が出てくるので、退職前に依頼しておくと後が楽です。

    秘書や一般事務は申請できない|職種そのものに制限がある

    見落とされやすいのが、職種そのものの制限です。

    タイには外国人職業規制法があり、外国人が就いてはいけない職種が定められています。それ以外にも、「タイ人では遂行が難しい内容の職務・役職であること」が求められ、秘書や一般事務といった、そのままの名目では枠が取りにくい職種があります。

    ただし、求人サイトに「事務」や「営業事務」の募集が出ていないわけではありません。実際には、日本語での本社対応やタイ人スタッフとの橋渡しといった、日本人にしかできない部分を職務として立てることで申請が通るケースがあります。職種名が同じでも、申請の中身は違うということです。

    法務・会計やエンジニアリング・設計といった専門的・技能的な職務については、資格や制度との兼ね合いで個別に確認が必要とされています。

    ここから分かるのは、タイで働くということが「タイ人の代わりに働く」ことではなく、「タイ人にはできないことをする」という前提に立っているということです。求人に日本語が必要なポジションが多いのも、職務内容に日本本社との連携が必ず入ってくるのも、この構造から来ています。

    BOI企業は条件が違う

    ここまで書いた条件には例外があります。

    投資奨励法(BOI=タイ投資委員会の恩典)、石油法、工業団地法による恩典を受けている企業は、資本金200万バーツとタイ人4名という制限を受けません。その代わり、恩典の内容について当局と結んだ契約を守る必要があります。

    BOI認可企業は求人票に「BOI企業」と書いていることがあります。就労許可の枠についての扱いが違うので、応募先がBOI企業かどうかは一つの目安になります。

    別枠として、タイ人が持っていない先端技術を扱う場合や、期限の決まったプロジェクトに専門知識をもって従事する場合は、資本金と外国人の人数の両方が制限外になる仕組みもあります。建設プロジェクトのエンジニアなどが該当します。ただし前者には、許可された期間内に2名以上のタイ人へ技術移転を行うという義務がつきます。

    応募前に整理しておきたい3つのこと

    最後に、実際に動くときの準備をまとめます。

    第一に、卒業学部と職種の経験年数。「学部と職種が噛み合っていれば2年、そうでなければ5年以上」という目安に自分を当てはめてみてください。学部と違う分野に進んだ人は、その分野での経験年数を正確に数えておく必要があります。

    第二に、書類。英文卒業証明書と、前職の英文在籍証明。どちらも自分では作れず、学校や前職に依頼して待つ時間がかかります。英文レジュメも含めて、動き出す前に揃えておくと機会を逃しません。実際、応募条件に「・応募時に英文レジュメ必須」と書いている求人もあります。

    第三に、希望年収の下限。月給5万バーツというラインはビザ更新の要件と重なっているので、それを下回る条件を提示された場合は、なぜその金額なのかを確認したほうがいいと思います。

    ビザと労働許可の手続きそのものは会社が主導します。応募する側が準備できるのは書類と経歴の整理までで、そこから先は内定が出てからの話です。逆に言えば、この3つさえ押さえておけば、あとは選考に集中できます。

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    掲載中の求人は随時更新されます。ビザや労働許可の扱いは会社の状況によって変わるので、気になる求人があれば選考の早い段階で確認してみてください。

    この記事のデータについて

    給与の集計は、2026年9月18日時点でABROADERS CAREERに掲載されているタイの求人217件を対象に、各求人の月給レンジの下限を数えたものです。求人票からの引用は各求人の応募資格欄の記載に基づいています。

    ビザと労働許可の条件については、ナディアコンサルティング「ワークパーミット取得の流れ・条件」(2021年公開)、およびアジア・ダイナミック・コミュニケーションズ「外国人がタイで働くために必要な許可」「タイ労働許可(ワークパーミット)について」「タイ労働許可のための英文卒業証明書について」(いずれも2012年公開・2026年6月更新)を参照しました。ビザの滞在期間については在タイ日本国大使館の案内も確認しています。

    本文中の金額や日数、書式の名称は出典が公開・更新された時点のものです。タイの就労許可制度は改定が続いている領域で、地域の雇用局や企業の状況によっても運用が異なります。実際に応募する際は、応募先の企業やエージェントに最新の状況をご確認ください。

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