「その他」に分類された8件の正体|6件は工場の技術職

求人検索の職種欄にある「その他」は、たいてい飛ばされます。何が入っているのかわからないからです。ところが実際に開いてみると、タイの「その他」はかなり性格のはっきりした集まりでした。
8件のうち6件が、製造業の技術職です。内訳は生産技術が2件、生産技術のマネージャー〜GM職が1件、射出成形技術が1件、切削工具の設計が1件、技術部のアシスタントマネージャーまたはマネージャーが1件。いずれも工場のなかで機械や工程に向き合う仕事です。
なぜこれらが「その他」に入るのか。おそらく、既存のカテゴリのどれにもきれいに収まらないからです。生産技術は「生産/製造/品質エンジニア」とも「製造業エンジニア(その他)」とも重なりますし、切削工具の設計は「設計開発エンジニア」に近い。複数のカテゴリにまたがる求人が、結果として「その他」に落ちているという構図が見えます。
ここから先に読み進める価値があるとすれば、この6件には他のカテゴリではあまり見られない共通の特徴があるからです。語学要件がきわめて軽く、そのぶん技術の中身が具体的に問われている。順に見ていきます。
日本語教師とWEBデザイナー|残り2件が示していること

製造業の技術職ではない2件は、日本語教師とWEBデザイナーです。
日本語教師の求人はバンコクのローカル人材企業からで、月給45,000〜50,000バーツ。今回の8件でもっとも提示額が低い求人です。ただしこの求人には他にない特徴があって、必須条件が「日本語教員登録制度に基づく『日本語教員登録証』を保有している方」の一つだけになっています。8件のなかで唯一、公的な資格を必須にした求人です。
WEBデザイナーはバンコクのECサイト開発運営会社で、月給60,000〜90,000バーツ。必須条件は「大卒」と「就業経験が5年以上で下記の実務経験がある方」で、その実務経験として広告バナーやランディングページのデザイン、Adobe Photoshopでの写真補正・加工、Adobe Illustratorでのグラフィックデザインの3つが挙げられています。加えてポートフォリオの提出が可能なことも条件です。歓迎条件にはGIFアニメーション制作、Adobe XDやFigma、WordPressでの画像差し替え経験が並んでいます。
この2件と製造業の6件を並べると、「その他」というカテゴリが何をしているのかがわかります。既存の職種名に収まらないものの受け皿です。だからこそ、ここには他の検索条件では出てこない求人が混ざっている。職種で絞り込む習慣がある人ほど、一度は開いてみる価値があります。
英語をほとんど求めない求人が6件|「言語不問」と通訳常駐

タイの求人を見ていて驚かされるのが、このカテゴリの語学要件の軽さです。
8件の英語レベルを並べると、指定なしが3件、初級レベルが3件、日常会話レベルが1件、ビジネスレベルが1件。つまり6件は英語をほとんど求めていません。ビジネスレベルを条件にしているのは、EMS企業の生産技術職1件だけです。
さらに応募条件の本文で明確に「不問」と書いている求人も3件あります。大手自動車メーカーの生産技術職は必須条件の1行目が「言語不問」。加工メーカーの生産技術マネージャー職は「学歴、言語不問(日本採用の場合は大卒以上)」。切削部品加工メーカーの技術部マネージャー職は「言語:不問(社内に通訳常駐)」です。この3件は英語レベル欄の指定なし3件と完全には重ならず、加工メーカーの求人は欄の上では初級レベルとされています。
3件目の括弧書きが、この現象の答えになっています。通訳が社内にいる。日本人技術者が何人か在籍していて、タイ人スタッフとのやり取りは通訳を介して行う。そういう体制が整っている工場では、語学ではなく技術そのもので採用の可否が決まります。
英語に自信がないことを理由に海外就職をあきらめている人にとって、このカテゴリは検討に値します。ただし当然ながら、語学が問われない代わりに技術の中身は厳しく見られます。
年間休日88日から126日まで|同じカテゴリで38日の差

8件のうち5件が、年間休日の日数を数字で書いています。並べると88日、99日、111日、113日、126日。もっとも少ない求人ともっとも多い求人で38日、5週間以上の開きがあります。
もっとも少ない88日は、コラート勤務の樹脂加工メーカーの射出成形技術職です。この求人は「土曜日は隔週勤務となります(8:00-17:20)」と書かれていて、応募の必須条件にも「土曜日隔週勤務可能な方」が入っています。月2回の土曜出勤に加えて、就業時間も8:00〜17:20。他の7件がいずれも拘束9時間なのに対し、この求人だけが9時間20分です。
もっとも多い126日は、バンコクのECサイト開発運営会社のWEBデザイナー職。「土日を基本とする週休2日」「年間休日126日(2025年)」で、9:00〜18:00の勤務です。日本のIT企業とほぼ同じ働き方だと考えていいと思います。
その間に、自動車部品メーカーの設計職が99日(2023年)、大手自動車メーカーの生産技術職が111日(稼働254日)、加工メーカーの生産技術マネージャー職が113日と並びます。厚生労働省の調査による日本の年間休日は労働者1人平均で115日前後、完全週休2日に祝日と年末年始が加わる大企業で120日前後です。工場系の求人はおおむねその水準を下回るということになります。
月給で比べると、88日の射出成形技術職は100,000〜150,000バーツ、126日のWEBデザイナー職は60,000〜90,000バーツです。休日が少ないほうが提示額は高い。どちらを取るかは働き方の好みの問題で、正解はありません。ただ、年間で5週間分の時間をどう評価するかは、応募前に一度考えておいたほうがいいところです。
駐在員に触れている求人が3件|円建てで年収を書く求人もある

タイで働く日本人の待遇は、現地採用か駐在員かで大きく変わります。このカテゴリでは、8件のうち3件が駐在員に言及しています。
大手自動車メーカーの生産技術職は求人タイトルに「駐在切り替えの可能性あり」と入れています。自動車部品メーカーの設計職は「駐在員採用の可能性あり!」、加工メーカーの生産技術マネージャー〜GM職は「駐在員雇用あり、好待遇」です。
なかでも3件目は踏み込んだ書き方をしていて、募集要項に「日本採用の場合」の条件が別立てで書かれています。住宅補助は日本採用のみ役職により給与とは別に支給、プロビデントファンドはなし、有給日数も現地採用とは異なる、という内容です。さらに別枠の「その他」欄に「■給与 年俸制 年収400〜900万円(スキル、経験に応じ増額可能)」と、円建ての年収レンジが記載されています。なおこの記載は日本採用に限定されたものとは書かれていないため、現地採用でこのレンジが適用されるのかどうかは面接で確認が必要です。
円建ての年収に触れている求人はもう1件あり、自動車部品メーカーの設計職が「※スキル、ご経験により年収100〜170万THB程度(500〜800万円程度)を予定」と書いています。駐在員に言及する3件のうち2件が円建ての数字を出しているというのは、日本本社の給与テーブルを前提に検討していることの表れだと思います。
ただし「可能性あり」という表現には注意が必要です。入社時点で駐在が確約されるという意味ではなく、実績や成果に応じて切り替わる余地がある、という含みで書かれていることがほとんどです。実際にどういう条件で、どのくらいの期間を経て切り替わった実績があるのか。ここは面接の場で具体的に確認しておく価値があります。
学歴の条件は高卒・大卒・不問に分かれる

学歴について明記している求人は3件あり、その内容が見事にばらついています。
WEBデザイナー職は必須条件の1行目が「大卒」。切削部品加工メーカーの技術部マネージャー職は「学歴:高卒以上」。加工メーカーの生産技術マネージャー職は「学歴、言語不問(日本採用の場合は大卒以上)」で、現地採用なら学歴を問わないという書き方です。
残る5件は学歴に触れていません。触れていないということは、実務経験で判断するという意味だと考えていいと思います。
製造業の技術職で学歴のハードルが低い、あるいは存在しないのは、現場での経験がそのまま評価されるからです。工作機械を何年触ってきたか、どういう製品を作ってきたか、不良をどう潰してきたか。そういう話が職務経歴書に書けるなら、学歴の欄は決定的な要素になりません。
一方でWEBデザイナー職が大卒を求めているのは、ビザや労働許可証の取得要件が関係している可能性があります。タイでは職種によって外国人の就労に一定の学歴や資格が求められる場合があり、企業側が安全側に条件を設定していることがあります。
経験5年がひとつの目安|4件が同じ水準を求めている

必須条件に経験年数を数字で書いている求人は4件あり、いずれも5年という水準で揃っています。
EMS企業の生産技術職は「電子機器製造業界における生産技術の経験(5年以上)」。WEBデザイナー職は「就業経験が5年以上で下記の実務経験がある方」。自動車部品メーカーの設計職は「切削工具の設計 / 製造マネジメントのご経験者(目安として5年以上)」。加工メーカーの生産技術マネージャー職は「CNCマシンを使用した機械加工の経験者(目安として5年以上)」です。
興味深いのは、後ろの2件がどちらも「目安として」という言い方をしている点です。5年ちょうどでなければ応募できないという硬い線ではなく、その程度の厚みを想定している、という書き方です。4年半でも中身が濃ければ話は進みますし、逆に7年あっても担当範囲が狭ければ物足りないと判断されることもあります。
残りの4件は年数を書かず、経験の中身だけを指定しています。大手自動車メーカーの生産技術職は「組立設備に関するご経験(電気配線、測定機器、制御プログラム、電子制御など)」、射出成形技術職は「精密射出成形業の経験がある方」、技術部マネージャー職は「自動車関連で自動旋盤の使用経験がある方(CNC旋盤)」、日本語教師職は資格の保有のみです。
年数より中身、というのがこのカテゴリの傾向だと言えます。職務経歴書には、扱った機械の種類、担当した工程、製品の分野を具体的に書いたほうが通りやすくなります。
社宅・寮・住宅補助|地方勤務を支える仕組み

勤務地はチョンブリーが4件、バンコクが2件、タイその他が2件です。バンコク以外が4分の3を占めていて、工場勤務が中心である以上これは当然の分布です。
そのぶん、住まいと通勤の支援を用意している求人が目立ちます。
もっとも具体的なのが自動車部品メーカーの設計職で、「社員寮の利用可(月1,500THB程度 / 日本人向けの寮が工場内に有り / 3食付き)」と書かれています。工場のなかに寮があって、月1,500バーツ、日本円にして7千円前後で3食つき。寮を使わない人には「通勤補助(寮の利用をされない方は乗り合いで通勤可能です。※市内のみ)」も用意されています。
コラート勤務の射出成形技術職は「住宅補助あり(コラート市内に会社が紹介・手配した賃貸物件にお住まい頂くような運用になります)」。会社が物件を探すところまでやるという運用です。切削部品加工メーカーの技術部マネージャー職は「バンコクに社宅完備」に加えて「通勤補助(バンコクから乗り合い、もしくは交通費の支給)」で、工場はチョンブリーにありながら住まいはバンコクという選択肢が用意されています。
大手自動車メーカーの生産技術職も「通勤補助(社有車あり、駐在者との相乗り含む)」「住宅補助」を挙げています。地方の工場勤務に踏み切れない理由が住環境にあるなら、こうした条件が用意されている求人から見ていくと選択肢が広がります。
賞与なしの年俸制が2件|提示額の読み方が変わる

月給の額を比べるとき、賞与の有無を見落とすと大きく判断を誤ります。
今回の8件のうち2件が、賞与なしの年俸制であることを明記しています。大手自動車メーカーの生産技術職は福利厚生欄に「賞与なし(年俸制)」、自動車部品メーカーの設計職は「※賞与無し、年俸制」です。どちらも月給80,000〜150,000バーツという条件になっています。
一方で賞与を出すと書いている求人は5件あります。金額に踏み込んでいるのが2件で、切削部品加工メーカーの技術部マネージャー職は「賞与(年1回(過去実績:基本給4ヵ月程度))」、日本語教師職は「賞与(年1回 /2025年度実績1カ月)」。残りの3件は金額まで書かず、EMS企業の生産技術職が「・賞与」、WEBデザイナー職が「・賞与(年1回)、昇給(年1回)※業績により臨時賞与あり」、射出成形技術職が「・定年前:ローカル従業員と同じとなるので、昇給や賞与があります。」という書き方です。
ここに4か月分の差があります。月給が同じでも、賞与が基本給4か月分出る会社と賞与なしの会社では、年収ベースで3割以上違ってきます。求人票の月給欄だけを横に並べて比較すると、この差はまったく見えません。
8件のうち賞与にまったく触れていないのは1件だけですが、金額の実績まで書いている求人は少数です。支給があると書いてあっても、何か月分なのかは面接の場で確認するのが確実です。タイの日系企業では年1回、基本給の1〜4か月分程度を出す会社が多い一方、年俸制で賞与を含み込んでいる会社もあります。「賞与は出ますか」ではなく「過去の支給実績は何か月分ですか」と聞くと、具体的な答えが返ってきやすくなります。
月給4.5万〜15万バーツ|上限150,000バーツが5件

給与のレンジは、下限45,000バーツから上限150,000バーツまで広がっています。
もっとも低いのが日本語教師職の45,000〜50,000バーツ。この求人はレンジの幅が5,000バーツしかなく、条件がほぼ固定されています。下限で見ると次に低いのが切削部品加工メーカーの技術部マネージャー職の50,000バーツ、その次がWEBデザイナー職の60,000バーツです。
一方、上限150,000バーツを提示している求人は5件あります。大手自動車メーカーの生産技術職(80,000〜150,000バーツ)、射出成形技術職(100,000〜150,000バーツ)、自動車部品メーカーの設計職(80,000〜150,000バーツ)、加工メーカーの生産技術マネージャー〜GM職(80,000〜150,000バーツ)、そして切削部品加工メーカーの技術部マネージャー職(50,000〜150,000バーツ)です。8件のうち5件が同じ上限で揃っているのは、このカテゴリの提示額がそのあたりで頭打ちになっていることを示しています。
最後の1件はレンジの幅が100,000バーツと極端に広く、これは「アシスタントマネージャー or マネージャー」という募集の仕方に対応しています。どちらのポジションで採用されるかによって条件が変わるということです。
下限が100,000バーツと最も高いのは射出成形技術職です。年間休日88日、土曜隔週勤務、勤務地はコラートという条件とセットになっています。提示額が高い求人には、それだけの理由があると考えたほうが実態に近いと思います。
ビザ・就労許可と、応募前に整理しておきたいこと

タイで働くには、就労ビザ(ノンイミグラントB)と労働許可証(ワークパーミット)の両方が必要です。ビザは本人が在外タイ大使館・領事館で申請しますが、その際に企業側が発行する招聘状などの書類が必要になるため、採用が決まらないうちに個人だけで進めることはできません。労働許可証は入国後に申請しますが、申請者は本人で、労働省への出頭と署名が必要です。必要書類の準備や手続きの段取りは会社側が代行するのが通例です。
今回の8件は、全件が福利厚生欄に「ビザ、労働許可証支給」またはそれに相当する記載を置いています。この点は心配しなくてよさそうです。
気に留めておきたいのは、タイでは外国人1名の雇用に対して一定数のタイ人雇用と登録資本金が必要という規定がある点です。工場を持つメーカーであればタイ人従業員が多いため問題になりにくいのですが、小規模な会社に応募する場合は枠の状況を面接で確認しておくと安心です。
応募前に整理しておくと動きやすいのは、次の3点です。第一に、自分が扱ってきた設備や技術の具体名。CNC旋盤、射出成形機、組立設備の制御プログラムといった言葉が求人票にそのまま出てくるカテゴリなので、職務経歴書に機械名と工程名を並べておくと話が早くなります。第二に、年間休日と賞与を含めた年収ベースの希望条件。月給だけで判断すると、入社後に想定と違ったということが起きます。第三に、勤務地と住まいの許容範囲。寮や社宅を使うのか、バンコクから通うのかで、選べる求人がかなり変わります。
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